冬至祭の夜

 魔導具店「ナイアのお店」の二階から見えるのは、普段と違った夜だった。陽気な音楽、楽しげな笑い声、歓声。そんな喧噪が夜空にこだまする。
 今日は冬至祭、明日は新年祭。ビルサでは一年が終わり、新しい一年が始まる時だ。年が変わる夜、二つの祝祭に挟まれた夜は街全体が活気に飲まれる。神殿や広場に人が溢れ、そこら中でどんちゃん騒ぎをする。日ごろの罪滅ぼしなのか、大商人たちは酒や食事を盛大に振る舞い、それに群がる人々が飲んで歌って踊りまくって吐いたり寝込んだりする――そういう夜だ。
 そういう夜、なんだけど。
「あぁ‥‥ん‥‥ラート‥‥」
 壁に背中を預ける俺に、もう裸になった師匠――いや、ナイアさんが絡みつく。俺が身動きできないように、手の甲を壁に押しつけさせ、そして身体を密着させてくる。豊かな――なんて言葉じゃ到底たりない大きさの胸がふたりの間でむっちりと形を変え、みずみずしい唇が俺の唇を中心にキスの雨を降らせる。唇、額、頬、首筋、唇、まぶた、唇、唇‥‥。それに応えようとすると、くすっ、と笑みを浮かべて頭を後ろへ引く。手を押さえられているから、それ以上は追えない。もどかしい。
俺が諦めると、また、キス。舌を絡めもしなければ唇をこじ開けもしない、軽い口づけ。時には息を吹きかけながら、唇を触れさせてくる。
 手が、ぐっと壁に押しつけられた。そのことで初めて、俺が力を込めていたことに気づかされる。しっとりと柔らかい手を感じながら、じりじりと焦れながら、甘いキスの雨を受ける。体が熱くなってくる。芯からなにかが湧き上がるようにあふれ出し、体と心を高ぶらせてゆく。
 抱きしめたい。思いっきり抱きしめて、逃げられないように頭を後ろから押さえ込んで、息ができないほどキスしたい。でも、ナイアさんはそれを許してはくれない。俺の心なんて手に取るように分かっているくせに――分かっているからこそ、両手を自由にさせてくれない。もどかしさで全身がむずむずする。
「ふふ‥‥そんな顔しなくてもいいわ、あとでじっくり楽しみましょ‥‥。でも、今はだめ」
 そう言うと、また唇を何度も何度も触れさせる。
 顔中に隙間なく、といっていいほどたっぷりキスを降らせたあと、ナイアさんは俺の耳朶を噛んだ。前歯で、ごく軽く。今度は首筋。鎖骨。また、耳朶。キス。俺の手を壁に押さえつけたまま、キスと甘噛みを交互に落としてゆく。そして首の付け根あたりから、つうぅっと舌の先を這わせ、あごへ――ついに、唇へと上ってくる。思わず唇を開け、舌で迎えようとしたら――やっぱり顔を引いて、かわす。くすくすと笑うナイアさん――勝ち気で、自分勝手で、でもたまらなく色っぽい微笑‥‥何度見ても、毎日見ていても、それでも心臓がばくばくと鳴る。
「唇、閉じて‥‥。かわいがってあげるから」
「‥‥でも、俺‥‥もう‥‥」
 くすくすと笑って、だめよ、と囁く。仕方なく口を閉じる――耳元で囁かれ、目も閉じた。
 わずかな、本当にわずかな時間が過ぎてゆく。堪えられないほどゆっくりと、ナイアさんの唇を待つ。外の喧噪も凍り付いたように聞こえない。無音の中で、刺激を待つ――。
 ぬるり。
 びくんっ、と体が跳ねる。上唇を舐めただけの、軽い感触。舌先だけを使った愛撫――それは信じられないほど複雑な感触だった――そんな気がした。
 ぬるり。
 今度は下唇。
「――っは‥‥っ」
 思わず浅く息を吸い込んでしまう。瞬間、待ち望んでいた感触が襲いかかってきた。思わず開いた口、歯を一気に突破し、長い舌がなだれ込んでくる。
「んぅううっ! んぅ、はぁあ‥‥」
 上あごの裏を舐め上げ、かと思うと歯茎の内側を舐めてゆく。俺の舌をこともなげに巻き取り、絡め取ってゆく。逃れようとして舌を暴れさせても、抵抗にさえならない。それでいながら、舌の裏、歯茎、頬の内側を余すところなく舐め、擦る。ざらつく熱い粘膜に蹂躙され、犯されてゆく。いつもならもう少し反応できるのに‥‥!
「ぷはぁっ! はぁ、はぁ‥‥ナイ、ア、さ――!」
 ぶちゅうぅっ、ぐちゅ、ずじゅぅうっ。
 ようやく息を継げたと思ったら、それも一瞬。一気に襲いかかられて、どんどん追い詰められてゆく。は、反撃‥‥っく、ぁ、無理だ‥‥手が‥‥押さえられて‥‥力、入らない‥‥!
手は相変わらず壁に押しつけられたまま。両腕を広げたまま口を犯され、思考にもやが掛かってゆく‥‥。
「ぷは‥‥ぁぁ‥‥っ」
 ――かくん。

 手はナイアさんに捕まったまま、俺の膝が降参した。背中を壁にもたれさせ、ずるずると崩れてしまう――それを大蛇の下半身で支えられ、どうにかへたり込まずに済んだ。ずっしりと重いまぶたを必死に開けると、目の前には妖艶に微笑むナイアさん。その顔が近づいて、俺の顔を少し上へ向け‥‥また、キス。もう手を押さえ込みもせず、柔らかな両手で俺の顔を支えて‥‥舌を絡め、舐め、そして唾液を流し込んでくる。自然に、こくり、とそれを飲み下す。でも止まることなく唾液は流れ込んでくる。それを飲み下し、舌をもてなす。唾液が口角から溢れ、たらたらとこぼれる。
 抱きしめたい――でも、もう腕は自分の物とは思えないほど脱力しきって、まるで思うようにならない。ひたすらに口を犯され、心を抱かれ――ああ、こういうの‥‥あったよな‥‥。

 ‥‥初めて、ナイアさんに抱かれたときだ。俺は初めて触れる女性、初めて触れるラミアに抱きしめられ、熱いキスを味わって‥‥

「‥‥っふぅ‥‥っ! ――ぁ‥‥ぁっ!!」
 頭が真っ白になり、手足ががくがく震え、ナイアさんの舌が一層強く絡まり――意識が、破裂した。

 ――わあぁぁっ、と歓声が聞こえた。陽気な歌声が聞こえた。でも、それは窓越しに聞こえる音。
「‥‥久しぶりね、あんたがキスだけでイくのは‥‥。ふふふ、なかなかいい顔になってるわよ‥‥」
 股間に染みを広がらせてへたり込んでいる俺にからみつき、ナイアさんが艶然と微笑む。まだしびれたように力が抜けている腕でその細い腰を抱くと、嬉しそうに俺を抱きしめ返してくれた。
「‥‥最近はあんたもほんとにすごいけど‥‥あたしのこと、甘く見てたでしょ‥‥ふふふっ‥‥」
 ‥‥ああ、そうだった。それが発端だっけ‥‥。

* * * * *

 それは今日の夜、食事が終わった後のことだった。まだ多少おとなしい喧噪を外に聞きながら、俺は思い出したように訊いた。
「そういや師匠、年越しのかがり火は見に行かないんですか?」
 冬至祭の深夜には、ヴァスム、アプトス、ラミーサの三神殿で巨大なかがり火が焚かれる。力を失った太陽に活力を与えるため、かつて神々が焚いたと言われる火柱――がそもそもの始まりだそうだけど、実際には年末年始最大の単なるお祭り騒ぎだ。で、それを見に行くのかどうか聞いてみたんだけど――
「いやよ、めんどくさい。‥‥だって寒いじゃない。人混みばっかりで暑苦しいし」
 ‥‥師匠、理由がめちゃくちゃです。最初の一言にすべてがこもってるんだろうけど。
「じゃ、家で年越しですね」
 皿を片付けながらそう言うと、
「そうね。ベッドの中で‥‥よね? ふふ、なんだか燃えそう」
 夕飯を済ませてしまうと、師匠は――いや、ナイアさんは、あっというまに思考が「夜」になってしまう。それを改めて痛感しつつ、うっかり言ってしまったんだ。
「ナイアさん‥‥たっぷりかわいがってあげるよ」
 さすがに普通の会話でそれを言うのは恥ずかしくて、耳元で囁いたんだけど‥‥
「へぇ‥‥。昨日あたしを失神させたからって、あたしを完全に制御してるつもり? いいわ、思い知らせてあげる。‥‥覚悟しなさい‥‥ふふふ」
「えっ!? あ、いや、そういうつもりじゃなくて‥‥!」
「そんなにおびえなくてもいいじゃない、することは同じなんだから。――片付けが終わったら来てね。‥‥一生忘れられない年越しにしてあげるわ」
 にやりと笑ったその美貌は、とんでもないほど迫力があった――。

* * * * *

「‥‥ナイアさん‥‥すごかった‥‥です‥‥」
「んふふ、たまにはこういうのもいいでしょ?」
 嬉しそうな笑顔。機嫌、直ったかな‥‥なんて思った俺は、やっぱりナイアさんを甘く見ていたんだろう。
「‥‥ふふっ、もっともっと気持ちよくしてあげる。記憶が飛ぶくらいイかせてあげる。たっぷり味わって、感じて‥‥あたしのラート‥‥」
 ちゅうっ、じゅるぅ‥‥っ、くちゅ‥‥。
 また、深い口づけ。俺の舌を翻弄しながら、手早く服を脱がせてゆく。脱がされた服がぱさっと落ちると、ナイアさんのきめ細かい肌が、腕が、俺の体に密着してくる。しっとりと温かくて、柔らかくて‥‥。
「‥‥ぁっ‥‥!」
 ひやり、と感触。柔らかい指先が、俺のあそこに絡みつく。亀頭に手のひらをかぶせるようにして、指先でサオを包み込む‥‥。さわさわと繊細になぞり、撫でてゆく。男が一人でするときみたいな激しさはなくて、軽く、優しい。でもその指先は俺の感じるところを確実に攻めてくる。さっき放った精子を塗りつけながら、擦りあげ、包み込み、撫で、確実に俺を高ぶらせてゆく。
「‥‥ん‥‥はむ‥‥うぁ‥‥ナイア、さん‥‥うますぎ‥‥」
「当然でしょ‥‥んん‥‥、はぁ‥‥ん‥‥。‥‥イッてもいいよ‥‥」
 そう言うと、いきなり手の動きが変わる。手首をしならせて、そのバネでしごき上げてくる。
 にちゃっ、にちゃっ、と粘つく音が響き、同時に下腹部から全身に熱が湧き上がり‥‥
「っく、ぁあっ、そ、そん‥‥な‥‥っ!!」
「我慢しなくていいわ、出しなさい‥‥ほら、ふふ、何度でもイかせてあげるから――耐えても無駄よ」
「ぁ、っくぅううっ――!!!」
 ブシュッ!! ビュゥッ、ドクンッ、ドクン、ビクッ、ビクン‥‥!
 またしても精液を吹き上げる俺の分身。勢い良く吹き出したそれはびたびたとナイアさんの下半身を汚し、床を汚す。っく、なんで、こん‥‥な‥‥気持ち‥‥いい‥‥。
「‥‥たくさん出たわ‥‥。すてきよ‥‥たっぷりぶちまけたのにまだガチガチ‥‥」
 ペニスをしごき上げながら、俺の唇に軽いキス。快感に朦朧として、もう何をしていいのかもわからない。‥‥このままだと、ひたすらナイアさんに抱かれ続けるのかも‥‥。
「‥‥ふふふ、だいぶ反省したみたいね。眼が完全に堕ちてるわ‥‥。ねえ、どうしたい?」
 挑発的な眼で俺を見つめながら。きれいに紅を引いたつややかな唇が、俺の欲望を見透かしたように笑みを浮かべる。
「入れ‥‥たい‥‥」
「聞こえないわ‥‥」
 耳元に唇を寄せて、くすくすと笑う。
「お願い‥‥ナイアさん、入れさせて‥‥」
「ふぅん、どこに? ――なんてね、冗談よ。‥‥これ以上焦らしちゃかわいそうだしね」
 そこまで言うと俺の脇に手を差し込み、ぐっと持ち上げる。そしてナイアさん自身も、蛇の下半身を伸び上がらせて――疑問を差し挟む暇もなく、俺は立ち上がらせられ‥‥
「腕、絡ませてごらん‥‥そう、あたしの首に。しっかり抱きついてなさいよ‥‥」
 まさか、立ったまま‥‥? そう思った時には、もう熱く濡れたところが先端に触れていた。
「‥‥いくよ、ラート。抱いてあげるわ‥‥」
 右手で俺の分身を導き、左手で俺の腰を抱え――
「あぁ‥‥はぁ‥‥っ!!」
「っく‥‥っ!!」
 ――ちゅくっ‥‥ずぶんっ‥‥!
 腰を抱える手が抱き寄せられたとたん、俺はナイアさんにしがみついたまま、ついに繋がった。
「‥‥っ、んぅ‥‥っ。はぁっ‥‥、なかなか、いいでしょ‥‥新鮮で‥‥。ほら、腰動かしてごらん、そう‥‥前後に‥‥」
 下半身を脚の間に割り込ませるようにして、そして俺の腰を両手で抱きしめる。上手く腰が動かせない俺を楽しむように笑みを浮かべ、前後に身体をくねらせる。意志とは無関係に張り詰めたモノが、その動きにあわせてナイアさんを貫く――そのたびに、柔肉が俺を溶かしてゆく。
「っ、な、ナイアさん‥‥そん‥‥な、激し‥‥!」
「まだよ、まだ‥‥もっと激しくしてあげる‥‥!」
 言うやいなや、俺の背中を壁に密着させる。そのまま、ナイアさんが猛然と身体をくねらせ始めた。おっぱいが胸板にこすれ、腰が上下左右、前後にくねる。俺が主体のピストンでは味わえない感触――信じられないほど、気持ちいい‥‥!
 左右、前後に腰を動かすたびに、熱い襞が締め上げる。ぐちゅっ、ぶぢゅっ、と肉沼が鳴き、俺の剛直を溶かさんばかりに貪る。上気した微笑がのぞき込む。淫猥な、勝ち誇った笑みを浮かべ、一層強く腰をこすりつけ、叩きつけてくる。――俺にできるのは、ただ耐えて、柔肌に抱かれながら犯されることだけ。
「ああっ、はぁっ、くはぅっ‥‥!! どう、気持ち、いい、でしょ‥‥? うっ‥‥ぁぁ、いいわ‥‥すごく‥‥!!」
 口角から涎を垂らしながら、うわずった声で囁く。
 ぱちゅっ、ずじゅっ、ぐちっ、くちゅっ‥‥!
「はぁぁっ‥‥! いいわ、ラート‥‥まだ、まだイッちゃだめよ‥‥限界まで我慢して、それから――あああぁっ! はぁあっ、そこ‥‥いいっ‥‥!!」
 俺を立たせたまま、深く腰を落とす――のけぞり、鋭く喘ぐ。荒い嬌声で酷使された喉が、そして全身が色づいている。全身を艶めかしくくねらせると、大きな乳房がゆさゆさと揺れ、弾む。
 すごい‥‥っく、だめだ‥‥こんな痴態、見せつけられて‥‥はぁっ、締まる‥‥っ!!
「――ぐぅうっ! お、俺が、調子に、乗っ‥‥て、まし、た‥‥!! も、もう、許し‥‥うぅうっ!!」
「あはぁっ!! いい、いいわ、たまらない‥‥! はぁん‥‥だめよ、今さら謝っても‥‥ほら、もっと感じて‥‥!!」
 必死にこらえながら謝る俺を抱きしめ、一層強く上下、前後に身体を揺する。汗でぬめる肌に必死に抱きつくと、ますます快感が強くなる‥‥やばい‥‥お、墜ちる‥‥!
「‥‥な、ナイアさ‥‥ん‥‥ぅああぁぁぁああっ――んうぅううううっ!!!」
「あ、あぁあっ、――――っっ!!!」
 抱きつき、腰を振り、呻き――唇をふさがれながら。三度目をナイアさんの身体に放った。抱き合い、唇を重ねたままがくがくと震える‥‥。
「かは‥‥っ‥‥あ、ぁぁ‥‥っはぁ‥‥っ!!」
 白い喉をのけぞらせ、不規則に息をつく。俺を抱きしめて立ったまま、ナイアさんはビクビクと震えていた。壁から俺を離して抱きしめ、そのまま少しずつ、ずるずるとベッドへ近寄ったかと思うと‥‥ゆっくりと身体が傾き――え‥‥!?
 ――どさっ!!
 驚く間もなく、二人はもつれ合ったままベッドに倒れ込んだ。
「ああ‥‥ごめ‥‥ん‥‥。はぁう‥‥イッちゃった‥‥」
 俺の上に覆い被さりながらとぎれとぎれに囁く声は、熱っぽくうわずっている。しっとりと汗ばんだ肌を抱きしめると、甘い吐息と笑いが耳をくすぐった。
「‥‥あふ‥‥。気持ちよかった‥‥。あ‥‥んっ、すごい‥‥まだ硬い‥‥。うぅっ‥‥ん、もっと‥‥楽しみましょ‥‥あぁっ、いい‥‥!」
 俺をベッドに押しつけ、見おろす。妖艶な笑みを浮かべたかと思うと、ねっとりと腰をくねらせる。目の前に弾む乳房を鷲づかみにすると、眉根を寄せて喘ぎ混じりの微笑を漏らす。淫らな美貌、しなやかな肢体、脚を擦る鱗の感触――ひとつひとつが五感を刺激し、三回果てた俺の下腹部へもう一度力を集めてゆく。疲れているはずなのに、そんな気がしない――そんな俺を感じるんだろうか、ナイアさんも甘い笑みを一層淫らに染め上げて、いやらしい喘ぎを大きくしてゆく――。

* * * * *

 もう、嵐のような夜だった。上になり、下になり、絡まり合って。俺の呻きもナイアさんの喘ぎも途絶えることなく、必死になって快楽を紡ぎ合う。ギシギシと叫ぶベッドの悲鳴が、浮かれた人々の騒ぎよりも大きく響く。
 ――突如、外の歓声が大きくなった。街全体を包む歓喜のどよめき――それに、ナイアさんのよがり声が共鳴し、響く。
「あぁあっ! いい、いいわラート‥‥!! っく、あはぅっ‥‥み、見てごらん‥‥。年越しのかがり火――ここからも、見え、るの、よ‥‥っくぅううっ!!」
 俺を組み敷きながら、ナイアさんが声を絞り出す。その身体を抱きしめたまま頭をそらせると、窓の外に明かりが見えた。遠くで赤い点がちらちらと光っていたかと思うと、見る間に大きな炎となって星空を焦がしはじめる。
「‥‥あれ‥‥ラミーサ神殿の‥‥だっけ――っく、ちょっ‥‥」
「そうよ、愛と豊穣の女神の‥‥ね。ふふっ、休んじゃだめよ。ほら、ああっ‥‥んうぅ‥‥」
 二人で腰をくねらせながら、唇を重ねながら。特別な夜は更けていった――。

* * * * *

 新しい年の二日目。冬の太陽が少し低めに街を照らす。窓の下からは楽しげな笑い声。小さな子供が走り回っているんだろう、ぱたぱたという軽い足音や、甲高い歓声が響く。でも、この部屋はもちろんそんなことは関係ない。
「あっ‥‥かふっ! ちょ‥‥っ、あぅうっ! 激し‥‥すぎ‥‥ぁああんっ!!」
 ナイアさんの背中を壁に押しつけ、立ったままぐいぐいと犯す。モノで貫き、抱き合ったまま腰を突き上げる。快感に飲まれるナイアさんは体をまともに支えられず‥‥一層深く俺に貫かれる。そう、この前の晩と逆の体位だ。朝っぱらから何を‥‥俺もそれはわかってるけどさ。
 ――新年最初の週は休業が普通なんだし、それならたっぷり楽しみたいでしょ? とはナイア先生のお言葉。
「そんなに大きな声出して‥‥外に聞こえるよ――ほらっ!」
「っくぁああっ!! だ、だめ、そんな‥‥またイく、許して‥‥!」
 がくがくと頭を振って哀願する。背中に爪を食い込ませ、なんとか上へ逃れようと必死になってる。
「‥‥そう言った俺を、ナイアさんはどうしたっけ?」
「ひぅっ!! ま、待っ――あああぁあああぁぁああっ!!!!」
「またイった‥‥。ふふ、いい顔だよ、ナイアさん。もっともっと、おかしくなるくらいイかせてあげるよ‥‥」
 外は寒いのに、二人は汗だく。とろけた眼で俺をにらむナイアさんを、さらに言葉で攻めてあげる。
 ――ああ、次は絶対仕返しされるよな、これ‥‥。
 ちょっと怖い気はするけれど、だからといって今、手加減する気はない。だって――ナイアさんもそれを望んでるんだから。せっかくの新年祭、二人で楽しく過ごさないとね。

(終)

弟子シリーズ第6作。三が日も済んでから年越しネタを思いつき,どうにか小正月には間に合った‥‥というネタ。ほとんどエロしかない、というろくでもない話でした。ちなみにどうでもいいおまけ有り。

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