水道の怪

「‥‥自称暴力団員の佐々木源三容疑者を、恐喝などの疑いで逮捕しました。調べによると佐々木容疑者は――」
 テレビの中で、お堅い感じのおねえさんが淡々とニュースを読み上げている。今日も大したニュースはないらしい。いや、恐喝事件のニュース直後にこの感想もどうかと思うが、実際恐喝だのなんだの、すさんだ世相にはたいしたニュースじゃない。なんたって人は死んでないんだから。不謹慎と言えばその通りだが、身近に縁がない限り多くの人がそういう感想を抱くだろう。
「次のニュースです。今日午前3時頃、凝水(こごみ)市の浄水場に侵入した不審な男が警備員に取り押さえられ、不法侵入や威力業務妨害などの容疑で警察に逮捕されました。調べによると、この男はインスタントコーヒーおよそ20キロを鞄に隠し持っており、『上水道からコーヒーが出るようにしたかった』などと意味の分からない供述をしているということです。警察では――」
 凝水市‥‥って、おい。この街じゃないか。何をやってんだか‥‥楽しい奴もいるんだな。まぁ実際に水道からコーヒーが出たらとんでもないことになるだろうけど。そもそも、俺はインスタントコーヒーが嫌いだ。つか、20キロではどうにもならんだろ。

「‥‥にしても‥‥あっちー‥‥だりぃ‥‥」
 別のことを考えようとしてニュースを見ていたが、もー限界だ。暑い。日本の夏はなんだってこう糞暑いんだ。まとわりついてくるような湿気と熱気が猛烈なだるさを運んでくる。まとわりついてくるのはおねーちゃんだけでいいっての。いや、この暑さの中なら、裸の女の子がまとわりついてきてもそれさえ不快に感じかねないな。
 エアコンをかければいいじゃないか、と言うかも知れないが‥‥俺は嫌いなのよ、あれが。なんというか、こう、人工的な冷気と乾燥が気持ち悪くて。だから夏場は扇風機だけで耐えるほかない。
「耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍‥‥んでられるかー! 暑いー!」
 先の帝のありがたいお言葉を噛みしめようにも、やってらんねー。
 そこで俺は思いついた。
「よし、シャワーでも浴びよう」
 善は急げとばかりにとっととテレビの電源を切り、いそいそと風呂場へ向かった。

* * * * *

 ふんふんふふんっ‥‥っと。鼻歌なんぞ歌いつつ、服を脱いでいざ風呂場へ。頭の上から降り注ぐ位置にシャワーヘッドを掛けて、きゅっきゅっきゅといつもの加減で蛇口の栓を捻ると、ちょうど俺の好きな温度のお湯が頭の上へとじゃーっと出て‥‥出て‥‥出てこない。
「おっかしーな‥‥壊れた? ――まさか断水、なんて言うなよ‥‥」
 この季節に水道が止まるなんて冗談じゃない。もう一度きっちり栓をしめて、再度挑戦。
 きゅっきゅっきゅ‥‥ごぼごぼ‥‥
「‥‥ごぼごぼ?」
 不安になって頭上のシャワー口を見上げていると、にわかに音がおかしくなって――
 ごぼごぼごぼ‥‥ぐじゅ‥‥じゅるじょるびゅるりびちびちびち!!
「っぎゃー!!」
 なんだか変な音が響いたと思ったと思った瞬間、シャワー口から水が――じゃなくて、なんか水の「ようなもの」がぶちゅぶちゅと吹き出て――当然、俺の顔面に直撃した。うぇ、き、気持ち悪ぃー‥‥何これ、ゼリー‥‥?
 ぶちゅぶちゅじゅるじゅるじゅるりびたびたびた
 と、止まらん‥‥。物凄い勢いで変なゼリーが溢れてくる。
 しばし呆然と見守っていたが、よく考えたら栓を締めたら止まるじゃないか。
 きゅっきゅっきゅっきゅ‥‥
「‥‥と、止まった?」
 風呂場には透明な謎のゼリーがたっぷり溜まっているが、とりあえずシャワー口から溢れてくるのは止まった。な、なんだったんだこれ‥‥。
 謎の半液体を処分するにも、まずはこの顔と頭にかかったのをどうにかしないと。幸いあまりべたつかない――というか、なんだか妙にまとまりが良くてつるつると滑り落ちる。とりあえず風呂場から出ようとすると、背後からなにか音が聞こえた。
「‥‥うー」

「‥‥な、なんだ‥‥?」
 おそるおそる振り返る。何もない。いや、溜まったゲルが大量にあるのは普通じゃないんだが、それ以外は何もない。
「‥‥もぉぉ‥‥」
「!?」
 今度は間違いない。この風呂場のどこかに、なにか音‥‥というか、声を出すものがいる。ね、猫とか‥‥いるはずないよな‥‥。じゃあ一体――
「なんてことするんですの!?」
「わぁあっ!?」
 間違いない、今のは人間の声だ。
「『わー』じゃありませんわっ。どうして止めたりしやがるんですかっ! 途中で出られなくなったじゃありませんことっ!?」
「だっ、誰だ、どっどこからしゃべってる!?」
 天上から床まで見回しても、誰もいない。
「あなたのその目はなんですか、付いてるだけなら捨てておしまいなさい! ‥‥目の前ですわっ!! もう結構、わたくし自身でなんとかしますっ!」
 目の前ったって‥‥でんでろりんとゼリーが溜まってるだけなんだけど‥‥な、なんか一箇所に固まってる‥‥? っていうか、盛りあがって、か、勝手に形が変わって‥‥

「マドハ○ド!?」
 某有名テレビゲームのモンスターの名前を叫んでしまった。具体的に言うとゼリーが人間の手首のような形になって液面から突出し‥‥あろうことか、蛇口の栓を回し始めたのだ。
 きゅっきゅっきゅ‥‥ぶちゅぶちゅにゅりゅりどぼどぼどぼ
 カランから勢いよくゼリーが出てくる。それは透明マ○ハンドと合流し、風呂場に広がるゼリーはますます大きな塊になってゆく。呆然と見ていると、途中で蛇口からの音が変わり、ゼリーが止まる。と、マドハン○が栓を締める。見る間にゼリーが一箇所に集まって、大きな塊になり、形を変えて――

「ふぅ。やっと出られましたわ‥‥ところであなた、いま失礼な呼び方をしやがりませんでした?」
 「それ」は、あろうことか人間の‥‥いや、女性の姿をしていた。透明だからもちろん向こう側が透けて見えているけど、完全な無色透明じゃないので、それが女の形だということははっきり分かる。髪(といっていいのかわからないけど)はセミロング、華奢な体つきに見えるけれどもおっぱいと腰つきはなかなか‥‥って、怪人ゼリー女相手に何を考えてんだ俺は。
「‥‥まあいいですわ。ところでさっきから何をじろじろと見て‥‥ああ、わたくしに見惚れているのですね! ほんとに男というのは魅力的な女と思えば何の遠慮もなく‥‥でもしかたありませんわ、ああ、美しすぎるわたくしがいけないのかしら‥‥」
 非難がましい声を上げたかと思うと、今度はやたら大仰な身振りと口調で我が身の美しさを嘆く怪人ゼリー女。つか、声でかいよ‥‥。なんかこっちも気が抜けるなあ。怪奇事件を目撃してるってのに。
 ‥‥ま、まぁとりあえず意思の疎通は図れそうな気がするので、何者なのか聞いてみよう。未知との遭遇‥‥どきどき。

「え‥‥ええと‥‥きみは‥‥あの、どういう‥‥」
「ああもうはっきりおっしゃってくださいません!? わたくしウジウジした野郎は大嫌いでしてよ大体なんですの裸で待ち受けるなんて不作法なことをしておきながらこのわたくしに無礼千万――」
 前言撤回。会話にならねーぞ、おい。一人でしゃべりまくってる。
「――っかく来てさしあげたというのに栓は閉まってるわやっと出られたと思った途端にいきなり栓を止めるわ出られなくて困っているのに手も貸さないわじろじろ見るわ普通まずは飲み物を出すとかおしゃべりをするとか何とかしてそれからおもむろに――って、聞いてますの!?」
「え!? は、はいっ!!」
 ごめん全然聞いてなかった。つか、何なんだよう。怖いよう。
「‥‥ほんとにどーしようもない男ですわね‥‥これ以上話してもしかたありませんわ。とっとと本題に移らせてもらいますっ!」
 言うやいなや、ゼリー女――というか、スライム女とでも言った方がいいのかな――の顔がずいっと近づく。あ‥‥今まであっけにとられて気付かなかったけど、美人だ‥‥。

「んむっ!」
 一瞬見惚れていると、彼女の口がいきなり俺の唇に押しつけられた。同時にぬるぬるとした腕や体が俺の全身にまとわりついてくる。っ、ちょ‥‥っ‥‥こ、これは‥‥!?
 ぬちゅ、ぐちゅる‥‥ぶちゅ‥‥ぐちゅ‥‥っ
 スライム女の唇が、何度も絡みつくように俺の唇に接する。理性が麻痺してしまったんだろうか、体を動かす気にもならない。彼女の「舌」が歯列をぬるぬると這い回る。歯列をこじ開けようとするその動きを歯を閉じて拒んだが、その「舌」は歯の隙間から染みこむように突破し‥‥あとはされるがままに口を――犯される。彼女がじゅるじゅると俺の口の中を満たしてゆき、口の中はスライムでいっぱいになり、そしてそのスライムが自在に形を変え、粘膜という粘膜を刺激し、犯してゆく。俺の目の前にある半透明の美女の顔は陶然とした笑みを浮かべ、力が入らなくなった俺を楽しげに見つめている。
「‥‥ぷはっ‥‥んぶぅっ‥‥!」
 呼吸が浅くなり息を継ぐと、舌の形のスライムが一層激しく暴れ回る‥‥。
「ふふ‥‥キスに弱いのですわね‥‥」
 そう言うと、彼女は俺の身体を取り込むかのように絡みつく腕に力を加えた。半液体の胸の膨らみ――いや、もう「乳房」といってしまおう――が、俺の体に押しつけられる。自在に姿を変える体なのにその膨らみははっきりと弾力を感じさせ、先端の尖りも俺の体を刺激してくる。それでいながら、押しつけた部分を柔らかく揉むようなうごめきは、人間の胸では絶対にできない刺激。う‥‥あ‥‥こいつ‥‥なにがしたくてこんな‥‥。
 ずるり、と手が滑りゆき、俺の股間にまとわりついた。ぐじゅぐじゅと音を立て、俺のそれを弄ぶ。ひんやりした感触がぬるぬるとした刺激とともに襲いかかり、逸物をしごく。驚くほど巧みに、繊細に。

「うふふ‥‥もうすっかり高ぶっていますわ‥‥」
 耳元で響くうっとりとした声。ついさっきまで切れ間なくしゃべりまくっていた女とは到底思えないほど、しっとりとした色香を感じさせる。う‥‥うそだろ‥‥こんなわけのわからない奴にいいように嬲られて、勃つはずが――。だが視線を落とすと、それは情けないほどいきり立っていた。
「どうなさったの? 膝ががくがくしてますわよ‥‥わたくしのキスはそんなに気持ちよくて? ふふ、もっと感じさせてあげますわ」
 手が逸物を握っていたかと思うと、その圧力が高まる。――ずぷり。何か「壁」を突き抜けるような感覚があったかと思うと‥‥俺のそれは彼女の手の「中」に潜り込んでいた。

「‥‥っ! な‥‥んだよ‥‥これ‥‥っ」
 熱い。
 彼女の体はひんやりと涼しいのに、その手の中は体を直接熱するかのように熱い――そう感じた途端、俺の脚は重力に負けた。バランスを崩してタイル床に倒れ込み‥‥いや、倒れそうになったと思ったら、スライム女が俺の体を支えてくれた。もちろん、その間も俺の息子は彼女の熱い手の中で自在に揉まれ、しごかれている。
「ふふ、うふふ‥‥まだまだ序の口ですのに‥‥。どうです、わたくしの手の中は熱いでしょう? 表面は冷たく涼やかでも、内側には力が満ちていますのよ‥‥ほぉら、たっぷり感じてください‥‥」
 ――ぐちゅる、にちゃ、びちゃり、ぐちゅ‥‥。
 彼女の半液状の体に半ば包まれながら、快感の総攻撃を受ける。口の中、首筋、乳首、背中、足――すべてがスライムで犯される。あるいは柔らかく、あるいは弾力に富んだ刺激が全身をくまなく責めてゆく。その間も、目の前では優雅な笑みを浮かべた顔が淫らな言葉を紡いで耳と脳を犯し、涼やかな手が俺のモノを飲み込んだまま熱い刺激で灼いてくる。
「‥‥ふふふ‥‥もうなすがままですわね‥‥。全身を責められて、もう溺れそうでしょう? でも‥‥本気で溺れるのはこれからですわ‥‥」
 そう囁くと‥‥な‥‥んだ!?
「――う、‥‥ああっ! な、やめ‥‥ろ‥‥くぁっ‥‥!」
「うふ、うふふ‥‥いい声ですわ‥‥」
 ――じゅくっ、じゅくっ‥‥灼けるような刺激が、尿道をさかのぼる。
「くはっ‥‥なにを‥‥して‥‥うぁっ!」
「くふふ‥‥あなたのおチンポの中に、わたくしが入ってますのよ‥‥どうです? こっちを犯されたこと、おありかしら?」
 じゅるじゅると入り込んでくるそれは、どんなに力を入れようともまるで無関係にさかのぼってくる。そして、チンポのなかを内側から焼くかのように責めあげ、うねり、蠕動する。
「――かはっ! あ、ぐぉ‥‥!! うぁあ‥‥っ!!」
「ふふふ‥‥聞くまでもないようですわね。素敵な顔ですわ‥‥でも、思ったより我慢なさるのね。うふふ、我慢することないのに‥‥ほぉら」
 尿道の中がうねり、それと呼応するように外側からぎゅうっと締め付ける。そして締め付けたまま前後にしごきあげ,同時に尿道の中の彼女も逆巻き,暴れて――!
「っくあぁあ!! っくぅぅっ!!」
 下半身の快楽神経を直撃するその責めに耐えることができたのは,おそらくほんの一瞬だっただろう。 ビクン、ビクン、ビクン――ペニスが激しく脈打つ。吹き出す精液が尿道を塞ぐスライムを圧し出し、タイムラグと共に思い切り噴出する。スライムと精液が絡まり合い、尿道を駆け上がって解放されるとき――俺は不覚にも一瞬気絶していたような気がする。

「――っはぁっ、はぁっ、はぁっ‥‥はぁ‥‥はぁ‥‥」
「あん‥‥っ。ああ、いい味‥‥」
 手の中に射精され、彼女はびくんっ、と体を震わせた。見ると、手の内部に噴き出した体液が白くたゆたっていたかと思うと‥‥それは急速に薄れ、霧散するかのように彼女の中へと溶けてゆく。
「え‥‥?」
「んふふ‥‥ずいぶんと溜まってらしたのね‥‥とても濃くて、わたくし好みですわ‥‥」
 いや、俺は子種がどうなったのか気になったんだが‥‥吸収したんだろうか? もしかするとこれが目的で現れて、俺を襲ってきたのか? ‥‥とんだエロスライムだな。よし、覚悟は決めたっ!!
「男がヤられっぱなしでたまるかー!」
 気合と共に起きあがり、スライム女の肩を押し倒すっ!!
「きゃっ!?」
 ずるっ。
「どわあっ!?」
 どべしゃっ!!
 ‥‥不覚。相手が半液状だと言うことを忘れてた。ぬるりと滑る肩を押し損ねてバランスを崩し、足下の「彼女の一部」を踏んづけて滑り、あわてて彼女に掴まろうとしてやっぱり手が滑り――結局、彼女の胸の谷間に顔面から突っ伏してしまった。結果的に「相手を押し倒す」という目的は果たしたものの、なんだこの敗北感は。彼女がいなけりゃタイルで額が割れるところだ。‥‥そもそもこいつがいなけりゃ風呂場で暴れたりもしないが。
「――ぷはっ! はぁはぁ‥‥」
「んふふ、ずいぶん積極的になってきたじゃありませんの?」
 スライムで窒息しかけて顔を上げると、押し倒されたままのスライム女が笑っている。くっそー、なんかとことん主導権を握られている気が‥‥。
 ええい、そう言ってられるのも今のうちだ。俺の肉棒でヒィヒィいわせてやるっ‥‥って、どうやって入れたらいいんだろう。見た感じ、あそこの穴が無いように見えるんだけど。
「ふふっ、そのままブチ込んでくださればいいのよ? わたくしの体はどこでも入れられますし‥‥ね?」
 ‥‥完全に舐められてるな。
「じゃ、適当に入れる、ぞっ‥‥!」
 ず‥‥ずぷ‥‥ん。
「う‥‥熱っ‥‥。――っく!? うぁっ、くそっ、うぁあっ!」
「あん、入りましたわ‥‥うふふ、まさかさっきのをお忘れかしら? 尿道を責められて、一瞬気絶するほど悶えてらしたのに」
 や、やっちまった‥‥どこにでも入れられるってことは、どこでもさっきの尿道責めをされるってことじゃないか‥‥! お、俺は何をやって、る、っ、はぁぅっ!!
 腰を引こうにも、まとわりついてくるスライムはそれを許さない。それどころか玉袋まで包まれて柔らかくもみほぐされ、そうかと思えば裏筋をなぞられる。そして、絶え間ない蠕動がチンポの外と中から熱い刺激を与え続ける。チンポと脳が直結されて焼かれているような錯覚さえ感じる。
「くはっ、やめ、やめ‥‥て‥‥くれ‥‥!」
「いやですわ、感じてるくせに。我慢汁もたくさん出てますわよ‥‥ほぉら」
 ぬるり‥‥じゅぐぅっ。
「くぁあああ!! うあぁっ!」
 いっそう深く肉棒を締め上げたかと思うと、尻の方にも冷たい感触が走り――染みこむように入り込んできたそれが、消化管の裏側から前立腺をぐりぐりと狂わせる。
「いかが?」
「く‥‥うぁ‥‥!!」
 やばい、こいつ、ほ、ほんとに‥‥! ああ、溺れ‥‥る‥‥っ!

 ぐちゅっ!
「んぅっ!!」
 俺が耐えきれずに彼女の体を強く抱くと、力んだ手がその身体の――熱い原形質の中に潜り込む。その瞬間、彼女は今までとは違う声を上げた。
「――ちょっ‥‥な、なにをいきなり‥‥なさい、ます‥‥のっ!? きゃふっ!」
 俺の腕を焼く温度が‥‥上がった? っく、チンポの周りの温度も上がりやがったけど‥‥う、ぁっ、これは‥‥もしかすると‥‥?
 ぐちゃ。
「ひっ! んはぁっ!!」
 彼女の中に突っ込んだ手を動かすと、明らかにそれに反応して声が上がる。‥‥分かった。
「あんたの弱点、わかったよ‥‥中をぐちゃぐちゃにされたいんだろ!」
「な、なにを言って――あひっ! きゃうっ、あっんぁああっ!!」
 ビクンビクンと身体をうねらせて悶える。責めて責めてイかせてやる‥‥とうまくいけばいいんだが‥‥やばい、俺の方も‥‥あんまり、持ち、そうにない、かな‥‥。
 ぐちゃっ、ぐちょっ、ぶちゅっ――!
 勢いよくスライム女の身体をかき回す。尿道や前立腺の刺激は弱まってきたが、代わりにチンポをくわえ込んでいる部分の温度も飛躍的に上がってきた。必死の抵抗なのか、締め付けやしごきあげる強さも増して――
「っく、くそっ――うぁ‥‥っ!!!」
 ぐちゅぅっ!!
「ひ、ぁあああっ!!!」
 どぷっ、どぷっ、どぷっ、どぷっ――
 思い切り抱きしめ彼女の身体を潰さんばかりにしたとき、不意に刺激が限度を超え――俺は二度目の射精をした。いつまで経っても射精が終わらないと思ったら、何ヶ月もオナ禁していたかのような量が出たようだ。多少は反撃できたけど‥‥な‥‥なんつーか‥‥男として情けねー‥‥。

「‥‥はぁ‥‥はぁ‥‥あー‥‥気持ちよかった‥‥」
 半ば彼女に埋もれながら、何とか感想を口にした。
「うふふ、当然ですわ‥‥このわたくしが相手をしてあげたんですもの。これで気持ちよくなかったなんて言った日にはケツの穴から手つっこんで奥歯引っこ抜いて鼻から出しますわよ」
 ‥‥スライムならではの脅しだな‥‥。つか、こいつなら本気でやりそうだ。
「まあ、あなたの責めもなかなか素敵でしたし、わたくしもまんざらではありませんでしたわよ。それに、あなたの精‥‥おいしかったですわ‥‥ふふっ」
 なんか微妙なほめられ方のような気がするんだが‥‥まあいいや。――そうだ、一番重要なことをまだ聞いてない。もう聞いてもいいよな。
「‥‥えと‥‥で、きみは一体なんで俺のところに‥‥もしかして俺はこのまま吸い殺され‥‥?」
 ちょっとだけ、それでもいいやという思いがあるのは――いやいやいや、何を馬鹿なことを。
「あなたがそうおっしゃったからですけれど? ‥‥吸い殺すなんて無粋なことはしませんわ。当然ご存じだと思いますけど」
 本気で何を聞いてるんだと言わんばかりの声と表情。どうも彼女は彼女で俺の対応に何やら不審を抱いていたらしい。が、『そうおっしゃった』って何だ。とりあえず命の心配がないことは分かったけど――
「いや‥‥その‥‥スライムの人に来てくれといった覚えは‥‥」
「‥‥!? 凝水市いずみ台三丁目5−1、ハイツこごみ206号室の吉岡さんでしょ!? 今日の午後1時半のご予約で‥‥」
「いや‥‥ここ、306号室だし‥‥」
「‥‥!!!!」
 あ。固まった。

「‥‥お‥‥」

「お暇しますわぁぁあああ!!!」
 どびゅるぶちゅりゅりゅじゅるるる!! じゅぽんっ!!!

 物凄い音を立てて、彼女は器用にも蛇口に飛び込んで消えてしまった。うーん、結局何だったんだろう。つか、予約‥‥?

* * * * *

 その後、俺は偶然出会った吉岡氏と話す機会があった。三十代の、見た感じはパッとしない会社員だった。最初はしらばっくれようとしていたが、結局聞き出したところによると‥‥どうも、彼女は「デリヘル嬢」だったらしい。ごく一部の「VIP会員」にしか知られていないそうだが、「水道管を通じてスライム女性を派遣する」という水道局に怒られそうなシステムだそうだ。が、どうやらそそっかしい彼女が訪問先を間違えたようだ。
 ‥‥スライムってのが実在するというのも驚いたが(しっかり楽しんだので今さら否定するのは無理だ)、それをコンパニオンにしているというのはもっと驚いたけどな‥‥。とりあえず「口止め料」として、その「通常会員」として紹介してもらえることになった。説明によるとVIPになるまでの道は遠そうだけど‥‥ま、あのハイテンションな彼女にもいつかまた会えるだろうと思う。

 あれ以来、うちのシャワーも水道も、普通の水しか出ない。

(終)

単発スライム娘ネタ。なんだか唐突にスライムさんが書きたくなって,10日ほどで書き上げてしまいました。ちょっとだけ逆レイプ風ですが‥‥微妙。ちょっと薄いかも。
スライムさんの表面の固さ等がどうなっているのかよくわからなくなってますが,すべて本人の意志で何とかなるのです。と強弁。

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