「ば、ばかな! 一瞬で‥‥!?」
醜い「怪人」が四散するのを目の当たりにし、女は恐怖の入り交じった驚愕の声を漏らした。先ほどまで高慢な笑みを浮かべていた美貌には焦りの色が濃い。
形勢は圧倒的に有利なはずだった。頑健な強化戦闘スーツで身を固めた数十人の下級戦闘員、骨格や筋肉に至るまで人工組織に置換した十五人の上級戦闘員、そして組織の技術の粋である生態兵器「怪人」。例え軍隊であろうとも軽く制圧できるはずのその部隊を、その男――黒瀬龍牙は、こともなげに全滅させた。
「以前の俺ならともかく‥‥今の俺には通用しない。ザーラ、貴様もここまでだ」
黒いバトルスーツに身を固めた龍牙は、感情を交えずにそう言った。そのスーツは、そこかしこで骸をさらしている戦闘員達のそれとよく似ている。しかしその性能に、そしてその着用者の能力に圧倒的な差があることは、この戦果が示していた。
「こっ‥‥これが‥‥これがゴルノフ博士の能力だというの‥‥!? ま、まさかこんな‥‥!!」
ザーラと呼ばれた女は驚愕と憤怒の入り交じった表情を浮かべる。しかしそれも今となっては意味のないこと。
「――博士は貴様らのような外道に力を使われたくはなかった。だから脱出し、俺たちに力を貸してくれた。それだけだ。‥‥おしゃべりは終わりだ。抵抗するならこいつらと同じ姿にしてやる。諦めるなら‥‥そうだな、女を痛めつける趣味はない。ひと息に地獄へ送ってやろう」
許す気はない、という宣言。それも当然だ。彼女の属する組織――《シュヴァルツ・バタリオン》と名乗っているという、謎の組織。彼らは闇から闇へと暗躍し、政財界と密接に結び付いて裏の社会を制圧していった。多くの国々がすでにその魔手に落ち、あるいは転覆し、あるいは混乱を極めている。世界は食い殺されつつあるのだ。頻発するテロ、誘拐、無差別殺人。さらに、無関係な市民を多数誘拐し、それを洗脳・改造して組織員とするなど、その非道は極限に達している。
しかし、すべての人びとが手をこまねいているわけではない。もはや数少なくなってしまった主要国として、なんとか国家体制を維持しているこの国で、その反撃の烽火が上がった。平和と正義を取り戻すための、砦にして前線――《ヴァンガード》。彼らの奮闘は徐々に実を結び、いまだ劣勢ながらも力を付けていった。そしてついに、敵の一角に迫ったのだ。情報統括ザーラ――情報戦を一手に担う、《シュヴァルツ・バタリオン》最高幹部の一人。彼女に、ついに鉄槌を下す時が来た。
「くっ‥‥!」
ぎりり、と歯がみをする。二十代の後半だろう、匂い立つような色香の持ち主だが、その冷たい刃物のような眼は「女性的な優しさ」などという言葉とは無縁だ。普段は妖艶にして怜悧な光を湛えているその瞳も、今は焦りと恐怖を露わに浮かべている。
彼女は龍牙の言葉に反応していた。『抵抗するならこいつらと同じ姿にしてやる』‥‥それは、あたりを埋め尽くす死骸と同じ運命をたどると言うこと。心臓を拳で貫かれている下級戦闘員のように、この自慢の乳房を叩き潰されるのか。手刀で頭蓋を割られた上級戦闘員のように、誰もが屈服するこの美貌を破壊されるというのか。吹き飛ばされた怪人のように、男の視線を独り占めにしてきたこの肉体が粉砕されるというのか。――そんな、そんな運命は許せない。この私のたどる末路のはずがない。この美貌を、この美しい身体をこんなところで失うつもりは絶対にない。
なら、諦めるか。諦めて降伏し、この男の手で安らかな死を迎えるか。――いやだ。死ぬつもりはない。生き延びてやる。そのためにはどんなことでも‥‥そうだ。どんなことでもする。組織への忠誠など知ったことではない。幸い、取引材料にできそうな情報は手の内に山とある。首領も売ってやる。この身体も使う。何の問題もない。使える材料はすべて使って、何が何でも生き延びてやる。生き延びさえすれば、この美貌さえあれば‥‥。――欲と打算のみに裏付けられた思考を一瞬で巡らせる。「忠誠を貫徹して死ぬ」という行為を讃える精神など、彼女は欠片も持ち合わせていない。何より、彼女はこの期に及んでまだ、勝算がないとは考えていなかった。
(でも実際の取引は最後の手段‥‥餌をちらつかせて、まずは交渉ね‥‥)
――腹をくくったザーラの瞳は、急速に落ち着きを取り戻してゆく。
「‥‥意外におとなしいな。観念したか」
降伏の意は示さずとも抵抗の様子を見せない彼女に、龍牙は少々の驚きを顔に浮かべた。龍牙の経験からすると、彼らはせっぱ詰まると自暴自棄になって自殺同然の攻撃を仕掛けてくるのが常だった。そういう無意味な行動に出ないのは、情報統括という頭脳的な立場にある故か――その思考を女の声が中断させる。
「‥‥取引はどうかしら?」
ザーラは落ち着いた低い声で、そう言った。瞬間、男の顔に浮かんでいた驚きが消え、代わりに侮蔑が浮かぶ。
「命惜しさに取引――か。腐りきった女だな。その腐った心の詰まった心臓、俺が止めてやろう」
多少は殊勝だと感心していたのがばからしい。やはり外道は外道。その言葉を実行しようと片足を踏み出した龍牙に、ザーラがたたみ掛ける。
「ええ、そうよ。命惜しさの取引。でも、私を殺すことで得られるものと、私と取引することで得られるもの‥‥天秤に掛けるまでもないんじゃないかしら?」
女は不敵な笑みを浮かべる。
その言葉は確かに間違っていない。彼女を始末して得られるのは、彼らの組織から優秀な幹部を一人減らし、またそのことで組織全体に衝撃を与えることができる、というそれだけのことだ。逆に、彼女との取引で得られるものは――
「あなた達の欲しがる情報、何でもあげるわ。組織の構成、能力、人脈‥‥予定している作戦、首領の居場所までね」
「‥‥っ。貴様は本当にそんなことまで知っているのか‥‥?」
龍牙は思わず声に出した。この雌狐を見逃がすだけで、味方が喉から手が出るほど欲しがっている宝の山が、本当に手に入るのか。そして、その考えを口に出したということは、彼女の取引に半ば乗ったようなものだった。
ザーラは余裕さえ感じさせる表情で追い打ちを掛ける。
「もちろん。ふふ、私の肩書きをお忘れ? 情報統括ザーラ。組織の情報は全部知ってるわ。それこそ、末端組織の明日の予定から、首領のモノのサイズまで」
そう言って、笑った。生き延びるという目的は達成間近なのが手に取るように分かるのだろう。そして、それは間違いではない。
「くっ‥‥! だが‥‥だが‥‥貴様は‥‥っ!」
龍牙は割り切れなかった。損得勘定からすれば、間違いなくこの女を生かしたほうがいい。そんなことはわかっている。だが、彼女はどうあっても敵の大幹部だ。多くの人々を死に追いやった組織の指導者の一人だ。《ヴァンガード》に情報を漏らした者達を、《シュヴァルツ・バタリオン》は「機密」の名の下に残虐な方法で殺し、情報提供者の関係者に至るまで見せしめに「処刑」してきた。その中には龍牙の見知った者も含まれている。そして、その指揮を執っていたのは間違いなくこの雌狐なのだ。簡単に割り切れるものではない。
苦悩する龍牙に、ザーラが近づく。腰を振りながら、ゆっくりと。見事なカーブを描くボディラインに強化スーツがぴったりと張り付き、その淫らで艶めかしい身体を際だたせている。そして、自らの魅力を知り尽くしているという彼女の自信が、より一層その魅力を高めている。
「ねえ‥‥龍牙? 悩むのはわかるわ‥‥だけど‥‥」
するり、と右手の指先が頬に触れる。
「時には、計算も必要よ‥‥。感情にまかせるか、理性に従うか‥‥失うもの、得るもの‥‥冷静に考えないと‥‥ね?」
美しい指先が、頬から首筋へ、鎖骨のくぼみへと滑る。龍牙の体を護る硬質のレザーのような素材の上を、白い指先が軌跡を描く。鎖骨から胸板、腹筋、臍へ、そして‥‥。
その指先が股間へ到達すると、ついに彼女は龍牙に絡みついた。
「‥‥好きにして‥‥。殺すのも、犯すのも、あなたに任せるわ‥‥」
それは勝利宣言だった。
間髪入れず、女の唇が重ねられる。濃いルージュに彩られた唇が、戦闘の興奮と怒りで乾いた龍牙の唇に押しつけられる。いまだ割り切ることのできない龍牙の唇を、ザーラの舌がぬるりとこじ開け、その心を攻め落とそうとするかのように這い回る。鼻から抜ける吐息が悩ましい。香しい黒髪が、柔らかい乳房が男の本能をじりじりと苛む。
ザーラは巧みにキスを続けた。疼くほど甘く、痺れるほど淫らに。歯列をなぞり、舌を絡め取り、そして唾液を流し込む。その間、左手は龍牙の頭を柔らかく抱き、右手は股間を丁寧にさする。ときおり身体をくねらせ、乳房を押しつけることも忘れない。
彼女は部下を弄ぶのが趣味だった。情報処理要員や戦闘員から容姿端麗なものを選び、性欲に奉仕させていた。男にとって、この極上の肉体が放つ魅力は猛毒にも等しい。この淫らなキスにさえ耐えることができずに射精させられる男も少なくない。
そしてその強烈なテクニックは、逡巡する龍牙に対しても遺憾なく発揮された。
龍牙の中の迷いを蝕み、彼の心を変化させてゆく。彼女への怒りと殺意が、押さえがたいまでの肉欲に変質してゆく。迷いに、指先がぴくぴくと震える。女を突き飛ばすべきか、抱きしめるべきか。彼の体は、もう隠すことができないほどに欲情していた。だが、理性は拒もうとする。その理性が、ザーラの魅力、そして技によって削り取られてゆく。そして――
それが望みなら――犯してやる。
殺意が肉欲に置き換わった瞬間、龍牙は躊躇なくザーラの唇を貪った。頭を強く抱き寄せ、呼吸ができないほどに強く唇を奪う。自らの舌を弄んでいた柔らかい舌を乱暴なまでに強く絡め取り、自分が受けたテクニックを存分に返す。あまりの変わりようにひるむ女を、思いきり抱きしめる。見事な量感を誇る乳房を胸板で押しつぶし、細い腰を折れんばかりに抱き寄せる。
「――ぷはぁっ! はぁ、はぁ――んむぅぅっ!!」
十分に息を継ぐのも許さない。激しいキスで女を蹂躙しながら、前触れもなくそのバトルスーツを引き裂いた。
黒地に赤をあしらったその挑発的なバトルスーツは、幹部用に特別に手の込んだ作りになっているはずだった。素材も構造も戦闘員ごときのそれとは比べものにならない強度を誇っている。それを龍牙は易々と引き裂く。その超人的な肉体能力も、件のゴルノフ博士による生体改造によるものだ。つまり、技術レベルの差こそあれ、彼も敵の戦闘員と同じということだ。
バトルスーツを引き裂かれると同時に、ほとんど巨大と言っていいほどの乳房が飛び出した。スーツを着た上でも十分すぎるほどの存在感を誇っていたが、それでも「押さえ込まれ」ていたらしい。外からの強制力から解放され本来の形を取り戻すと、ますます大きく、美しい。その先端には、艶やかに色づいた乳輪に、つんと立った乳首。鷲づかみにすると指の合間から柔らかくも張りのある乳肉が溢れる。同時に、美しい唇からも甘い吐息が漏れた。
その肉の双丘を揉みしだくのもそこそこに、龍牙は自らも肌を晒した。上半身の戦闘用スーツを荒々しく脱ぎ捨て、焦るかのようにベルトをゆるめる。
(ふふ‥‥“正義の味方”様も肉の快楽には勝てないのね‥‥。黒瀬龍牙――あなたの負けよ)
男が欲望を露わにしたことで、ザーラは勝利を確信した。彼女にとって、欲望に素直になった男ほど扱いやすいものはない。このまま自慢の肉体に溺れさせれば、情報という最大の交渉材料を使うことなく命の保障が手に入る。いや、この男そのものを手に入れられるかも知れない。
――そう、彼女は龍牙を狙っていたのだ。命ではなく、その存在そのものを。組織自体は彼の撃破・抹殺を計っていたが、彼女は違う。捕縛し、自分のものにしてやろうという私欲によって彼と対峙したのだ。その抜群に高い戦闘力を手元に置けば、自分の権力の支えとなる。そして何より、逞しい美青年は彼女の好みだ。魔性の身体で酔わせ、虜にすれば‥‥被害が大きいため当初の予定通りとは言えないが、それでも所期の目的は達せられる。絶体絶命の危機から脱出できると見るや、彼女は完全勝利さえ脳裏に描きはじめていた。
首筋にキスを落としつつ、手探りで股間をまさぐる。間もなく、勃起したそれが飛び出した。
(――さすがね‥‥思った通りかしら)
熱い肉棒を、細い指が繊細にまさぐる。固く張り詰めた根元を確かめると、指先で裏筋をなぞり上げる。そしてカリ首をなぞり、ペニス全体を包み込むように握る。片手で上半身に絡みつきながら、唇を常に男の肌に触れさせながら、指先で愛撫しつつ肉槍を品定めする。――長い。茎も太く、逞しい。カリも猛々しく開き、亀頭もしっかりとした固さがある。彼女の豊富な性体験をしても、これは一二を争う上物だ。そう思うと、愛撫の手つきにも自然と熱が籠もる。根元から先端までなで上げ、なで下ろす。指で輪を作り、カリをかすめるように上下させる。五本の指と手のひらを巧みに使い、しごき、撫で、ひねりを加え、握りしめる。そしてその愛撫に確実に応えて、ペニスは跳ね上がり、弾み、震え――ますます大きさを増してゆく。彼女の白い手を灼かんばかりに熱を持ち、表面の血管が指ではっきりと分かるほどに浮かび上がる。愛撫を始めた頃には多少残っていた柔らかさが完全に失せ、根元から先端まで完全な硬度が行き渡る。そして、手先だけで分かるほどに張り詰め、勃起してゆく。つい数分前に「上物」と判断したその時は、あれで半勃ちだったらしい。指と手のひらから伝わるある種のオーラに、彼女は心の高ぶりを抑えきれず――。
「しゃぶってあげる‥‥」
耳元でそう囁くと、厚い胸板やごつごつとした腹筋にキスを落としつつ、少しずつひざまづいてゆく。そして、急角度でそそり立つ先端が彼女の視界に入った。
「‥‥っ!」
ザーラは息を呑んだ。その威容は、「大きい」などという生やさしいものではない。――巨大だった。亀頭ははち切れんばかりになり、開ききったカリがその大きさを際だたせている。茎は赤黒く張りつめ、表面に走る太い血管は木の根のようだ。そして見事なカーブを描いて反り返り、彼女を圧倒した。
「‥‥すご‥‥い‥‥」
演技や挑発を完全に忘れ、嘆息する。ずくん、と子宮が疼いた。体の芯が、女の芯が熱く高ぶるのを感じた。しかし圧倒されてばかりいるような女ではない。改めて指で掴むが、中指と親指が出合うことがないほどの太さ。顔を近づけると、触れるまでもなく熱さが伝わってくる。むせかえるような雄の匂い。妖気じみた存在感が、彼女の視線を釘付けにする。指先で感じたオーラは本物だった。
(こんなご馳走に出会えるなんて‥‥楽しめそうね)
吸い寄せられるように唇が近付く。鈴口に軽いキス。応えて、びくんと跳ね上がるペニス。その先端に何度かキスを降らせると、徐々に裏筋へとキスをずらしてゆく。そのたびに、男のそれはびくんびくんと跳ね上がる。唇が陰嚢にまで達すると、今度は逆に鈴口に向かって舌を這わせる。上目遣いに、見せつけながら。龍牙が思わず顎をのけぞらせるのを見ると、ザーラは嫣然と微笑んだ。
「ふふ‥‥素敵よ。もっと気持ちよくしてあげる」
亀頭を半ば口に含み、舌の先で転がすように刺激する。茎を上下にさするように、横から唇で愛撫する。たっぷりと唾液をまぶすと、それをためらうことなく口に含む。巨大な亀頭に歯が当たらないよう注意し、口内いっぱいにペニスを飲み込む。それでも半分以上が残っている。口内では舌が巧みにうごめき、その侵入者を丁重にもてなす。同時に頭を前後させ、唇で亀頭、カリ、サオをしごき上げる。じゅるじゅると派手に音を立て、龍牙の聴覚を激しく刺激する。その巧みな口遣いに、龍牙の肉欲がさらに増幅されゆく。
しかし、彼の肉欲は愛情からのものではない。殺意と敵意が形を変えただけの、狂暴な肉欲。彼の内に渦巻くのは怒りにも似た興奮だ。そこに女へのいたわりはありえない。
「喉も使え」
龍牙はそう言うと、女の頭をむりやりに押さえ込んだ。
「んむぅっ!! ぐほっ、んぐぉぉっ!」
亀頭とサオが食道まで刺さり、ようやく男根がすべて女に飲み込まれた。苦しげに喘ぐ女を顧みず、そのまま頭を掴んで前後させる。
「ぶはっ! げほっ、げほっ、‥‥んぶぅっ!!」
何度か前後させると、いったん口から引き出す。咽をえぐられて女が咳き込むが、再びくわえさせ、咽を犯す。二、三度それを繰り返すと、ようやく龍牙はザーラの頭を解放した。
「‥‥はぁっ、はぁ‥‥なんて‥‥すごいの‥‥」
荒々しいイラマチオで咽を犯されたにもかかわらず、こんなものはお楽しみの一環だとばかりに彼女は余裕を見せつける。口や手での愛撫は、彼女にとって男を喜ばせるためだけではなく、自ら楽しむための行為でもあるのだ。証拠に、彼女の肉壺は直接的な刺激を受けたわけでもないのに淫らな蜜で溢れかえっている。そして、龍牙の目標は既にそこへと移っていた。精悍な顔に、雄としての獰猛な欲情が宿る。彼は一面に戦闘員達の死骸が転がる床に女を押し倒し、荒々しく股を開かせる。
「んふふ‥‥来て‥‥。あなたの大きいので、私を串刺しにして‥‥」
ぬるぬるになった花弁を指で開き、ことさらに媚態を見せつけて媚笑する。淫らに色づいたそこはてらてらとぬめり、止めどもなく蜜を溢れさせている。
(ああ‥‥欲しい‥‥。でも‥‥ふふ、虜にしてあげる‥‥。私の身体に思う存分溺れなさい‥‥ふふふ)
期待と勝算、挑発が彼女の美貌を一層淫らに彩る。その誘いに応じ龍牙はペニスをそこへあてがうと、腰と共に一気に彼女を貫いた。――ズグッ!
「ひっ――ああああっ!!」
一瞬息を詰まらせ、次の瞬間に叫ぶ。巨大なペニスに貫かれ、ザーラは仰け反り、絶叫した。それに構わず、龍牙は腰を押し込んでいく。圧倒的な肉塊が、女の肉洞を占領していく。男を喰らい尽くそうと涎を垂らしていた肉の罠を、鋼のごとき肉槍が貫いてゆく。灼熱の刃が、邪悪な思惑を切り裂いてゆく。
「あはぁああっ!!」
バツン、という音が響いた。激烈な衝撃が子宮を打ちのめす。奥底まで穿ち込んだ龍牙はいくらか腰を引くと――猛然とピストンをはじめた。
「かはっ! あひっ、くぁああ!! す‥‥ご‥‥いぃぃい!! こんな、こん‥‥な‥‥!!」
予想を遙かに超えた快楽に、ザーラは悶え狂う。顔を左右に振り、のけぞり、男の腕に爪を立て――
「――っ!!!」
悦楽と驚愕に言葉を詰まらせ、悩乱に顔を染めて――声も上げられずに達した。挿入から一分も経っていない。にもかかわらず、彼女は汗だくになって絶頂に狂った。男の巨大なペニスはもはや凶器だった。並の女であれば根元まで突き込むこともできないほどの大きさだ。しかし、たとえば同じ包丁という名前でも野菜を切るためのものと牛を解体するためのものがまるで異なるように、彼の雄物はザーラにこそふさわしい巨根だった。目の前で相対した時、ザーラが感じたオーラは確かに正しい観察だったのだ。彼女の最大のミスは、そのオーラを読み違えたこと。彼女は龍牙のそれを「ご馳走」と評した。それが猛毒入りだと気付かなかったのだ。致命的なミスだった。ミスを犯した雌狐は――むさぼり食われるのみ。
*
龍牙は彼女の成熟した性感を徹底的に犯す。突きさす時には反り返ったサオが彼女を狂わせ、引き抜くときにはカリがGスポットを容赦なくえぐる。発情しきった雌の肉襞が雄を巧みにくわえ込み、これ以上ないほど淫らに絡みつくが、龍牙はその快感を難なく乗りこなし、貫く。奥へ引きずり込もうとうごめく雌肉に、力の差を刻み込む。そのたびに女は歓びに震え、絶叫する。
龍牙は、ザーラの経験ではもはやどうにもならないほどの快楽を叩き込んできた。突き刺さるたびに子宮は限界まで押し上げられ、引き抜かれるたびに凄まじい快楽に飲み込まれる。先ほどまでの余裕などどこにもない。男を溺れさせ虜にするなどという甘い考えは一瞬で粉砕された。ただひたすらに絶叫するだけ。
「これは取引だろ‥‥なら、俺を楽しませろ」
激しいピストンとは裏腹な、冷静な声。
「っく! だめっ、もう、い、いくぅう!!」
「ふん、何度目だ?」
「んああああぁぁああ!!」
龍牙の挑発にも反応できず、ザーラは狂い続ける。龍牙にしがみついて背中に爪を立てたかと思うと、髪を振り乱して絶叫する。かと思うと、巨大な乳房を自ら揉み潰し、あるいは男に揉ませ、そのまま金切り声を上げて痙攣する。
「な、んで、こ‥‥んな‥‥!! ゆ、ゆる‥‥し‥‥てぇ‥‥ひあああああぁぁあ!!」
「『許して』? 貴様の望んだことだ、楽しめ」
「あはぁっ! あぉっ、くぉああっ!! いっっくぅぅぅううう!!!」
一度のセックスで何度となくイくなど、彼女でさえ初めてだった。――セックスの楽しみ方は熟知している。快楽の味わい方は底まで知り抜いている。男の貪り方は誰よりも知っている――はずだった。その自信が仇となる。そう、彼女は自らの魅力とテクニックで男を虜にするのは長けていたが、強すぎる男を虜にする術は身につけていなかったのだ。天敵に対して無防備に身体を晒した報いがこれだった。拷問にも近いセックス。だが、彼女の罪に対してはあまりにも手ぬるい罰だ。声帯が潰れんばかりに絶叫に絶叫を重ね、男に絡み付き、しがみつき、髪を振り乱し、よだれを垂れ流し、汗を飛び散らせて狂い続ける。傲慢な自信を叩き潰され、凄惨なまでの狂態を曝す。
*
「ざまあみろ‥‥イけ」
「――あおぉぉぁあああ!!!」
憎い敵を抱く。目の前で乱れる絶世の美女を前にしても、肉の欲情に塗りつぶされていても、それでも龍牙の心はほとんどぶれなかった。この女のせいでどれだけの罪のない人間が死んだか。どれだけの味方が苦境に陥ったか。それを思えば、この女に鉄槌を下すのが当然だと彼の本心は感じる。悶え狂い桃色に染まった細首をへし折れば、それで終わりだ。だが同時に、この情報統括という最高幹部を生かすことは、処刑するよりも遥かに大きな利益を生むことも彼の理性は理解している。
そのジレンマを解消する術は、当の女が与えてくれた。取引という名目で女を抱く。そしてそれはそのまま、取引というルールの中で女を徹底的に叩き潰すことに繋がる。あの挑発的な態度は、女としての魅力とセックスのテクニックによほどの自信がない限りとれない態度だ。ならば、この女が最も得意な分野で、その腐ったプライドを粉砕してやる。
怒りと憎しみに裏打ちされた肉欲が、彼の肉槍の性能を最大限に発揮させる。肩を押さえ込み、猛然と腰を振る。子宮を潰さんばかりに突き上げ、肉襞を削り落とさんばかりにえぐる。イキ狂うザーラ。イキ狂い、絶叫し、絶叫し続ける。龍牙にしがみつき、絡みつき、すがりついてよがり泣く。許しを請い、助けを求め、それでいながら快楽を全身で表現する。凄艶な乱れ方だ。
「いっくぅううっ!! だめ‥‥こわれる、死ぬ‥‥っ!! 許して、ぁぁああああっ!! いくううっ!!」
ひときわ高い絶叫を上げ、ザーラは崩れ落ちた。
* * *
辺りにひしめくのは死体、死体、死体。へし折られ、潰された死体ばかりだ。血も流れ、床の目地は赤く染まっている。その凄惨な場で、二人は絡み合い続ける。
ザーラは快楽に呑み込まれて一度失神したが、まもなく目を覚ました。いや、覚まされた。イった後にも子宮を揺さぶられ、快楽で叩き起こされたのだ。龍牙は自分が横になると、朦朧とする彼女を抱き起こし、腰の上に載せる。
「こういう体位、好きだろ。俺を骨抜きにしてみろよ」
彼は女をむりやり騎乗位にすると、力が入らず崩れそうになる女を支えながら挑発した。ザーラは悔しげに顔を歪ませたが、怒濤の快楽に勝てるはずもなく、腰を支えることさえ難しいようだ。
「俺を虜にして上手く逃げおおせるつもりだったんだろう? 安心しろ、命は助けてやる‥‥そのぐらいの約束は守ってやる。貴様らと違って、な。だが、代わりに俺を楽しませろ。ほら、動け」
「っく‥‥あはぁっ‥‥! あなた‥‥すご‥‥すぎる‥‥わ‥‥! この、この私が‥‥まる‥‥で‥‥かなわない‥‥なんて‥‥ぁああっ!! あっはぁぁあんっ!!」
ゆっくりと腰をくねらせようとするが、快楽で砕けきった腰は思うように動かない。下手に動くと男を責める以前に自らが快楽に堕ちそうになる。快楽に攻め落とされそうになるのを必死に耐えるほかない。だが、それを許してくれるほど甘い相手ではない。
「そんな腰遣いじゃ感じないな。もっと激しく動かしてみろ。根元まで突っ込んで、こうやって‥‥!」
「――っひぃっ!! はぁぉっ、んぐぅあああっ!!!」
容赦なく腰を落とさせ、そのまま乱暴に女の腰を自分に叩きつける。子宮を突き破らんばかりのピストンに、ザーラは舌を突きだして悶える。腰を掴まれ逃げ場もないまま、道具のように犯される。それはもはや“騎乗”位などではない。
「いく、いく、いく、ああっ‥‥イく‥‥っっ!!!!」
がくんがくんと痙攣しつつ金切り声を上げ、くずおれる女。その身体をもう一度正常位に戻すと、龍牙はザーラの乳房を鷲づかみにしたまま凄まじいピストンを繰り出す。限界まで性感を高ぶらせた女は、もはや半狂乱になって絶叫し続けるだけ。突き上げられてはイき、引き抜かれてはイき、失神し、次の突き上げでまたイく。そのサイクルが何度も循環した頃、ようやく龍牙もクライマックスに達しようとしていた。
「ああぅっ! ひぃっ、くはっ――あっはああっ!!」
「ザーラ‥‥そろそろとどめを刺してやる。これが鉄槌だと思え」
ビクンビクンと身体を跳ね上がらせる女に、快楽による処刑を宣告する――と同時に、その腰の動きが急激に激しさを増す。ザーラの顔が一瞬恐怖に引きつるが、すぐさま快楽の津波に呑み込まれる。
「っくぅぅうう――!!!」
絶頂に達した瞬間、凄まじいピストンが襲いかかる。人工筋肉が生み出す人間離れした乱打が子宮口を猛烈なスピードで撃ち、女を絶頂の奈落へ突き落とす。
ドスドスドスドスドスッッ!!!
「きひいぃぃぃぃいいいいっっっ!! あ、 あがぁぁぁあ あ あ あ゙あ゙あ゙あ゙ぁぁぁぁぁあああっっ!!!」
絶頂に絶頂を、さらに絶頂を際限なく重ねられ、女幹部は凄まじい断末魔の嬌声を上げた。その狂乱が最高潮に達したとき、ペニスの強烈な律動とともに膨大な精液が噴出し、女の身体を征服する。膣内に留まりきらない白濁液は結合部から勢いよく溢れ出す。熱い膣内での射精もそこそこに巨根を引き抜くと、勢いを保ったままの射精が数秒間続いた。極限まで乱れきったザーラの美貌も見事な乳房もドロドロに汚して、ようやくペニスは精液をはき出すのを終えた。激闘に、ついに決着が付いた。敗者は無残に叩き潰され、快楽の余韻にがくがくと震えるしかなかった。
*
「あ‥‥あ‥‥あはぁっ‥‥」
「‥‥さあ、取引開始だ。洗いざらい話してもらおうか」
焦点も呼吸も定まらず放心状態のザーラに、龍牙は構わず言葉を掛ける。
「‥‥はぁ‥‥ぅ‥‥すごかっ‥‥た‥‥」
「話す気がないなら――わかっているな」
「待って‥‥よ‥‥」
彼女は朦朧とする頭をなんとか起こし、龍牙に相対する――と思うや、そのまま龍牙の胸板に倒れ込む。
「龍牙‥‥あなた、すご‥‥すぎるわ‥‥」
精液まみれのまま、息も絶え絶えに声を絞り出す。その声は誘惑する調子などまるでなく、本心がこぼれ出るかのようだ。
「‥‥。そうじゃない、貴様の知ってる情報を‥‥」
「もう‥‥好きにして‥‥何度でも‥‥」
アイシャドウで彩られた眼が、快楽で熔けた視線を投げかける。例えようもない色香が匂い立つ。その色香に、あれほど酷使したはずの下半身がドクン、と脈打った。
「全部あげるわ‥‥体も、心も‥‥何もかも‥‥あなたに‥‥」
首領にさえ言ったことのない台詞がザーラの口をつく。男の腕に抱かれたまま、敵の女幹部は甘い睦言を紡ぎ続ける。‥‥宝の山を手に入れたはずの龍牙は、予期せぬ事態に呆然としていた。
(終)
悪女スレに投下したシリーズの第一作。例によってまさかシリーズ化することになるとは思っていなかったので、荒いところや都合の悪いところもいろいろあります。サイトに収録するに当たって多少改稿。(09年10月:エロシーンを中心にかなり手直し。くどくなりすぎたかも)
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