住み込み弟子シリーズ大陸図

■地図について
作中の世界で確度の高いとされる地図に基づく。ただし高低差は表されていないため,その点は注意。また,外洋や大陸北部など,情報がない地域に関してはすべて省いた。
○本編中で一回以上名前が出た都市は青文字・水色背景で示した。
○オレンジ色の線は主要な陸路,青色の線は主な航路を示す。河川を利用する交通路については陸路の表示で代用した。
■概観
大陸は西部・中部・東部・北部に大きく区分される。
■西部
 大陸西端から,ウルナル山脈・トルパシュ山脈・パルーシャ山脈の麓までの地域。概ね温暖で森林・河川が多い。山も比較的なだらか。南西には大小多数の島があり,フォルナ海では昔から海上交通が盛ん。中心都市はウィステラ(ウィステラ帝国首都)。
 東部の森林には異種族も暮らしているようだが,人間との接触はほぼない。そのため知的存在としての異種族を理解できない人々も多い。東西交易の発達する中,商人や学者を中心として徐々に異種族への理解が進みつつあるが,進展は緩やかである。
■中部
 ウルナル・パルーシャ・タリマの三つの山脈に囲まれた地域。湿潤な南西風がウルナル山脈に遮られるため大部分は荒れ地と砂漠。
 パルーシャ山脈の雪解け水はいったんシェダ砂漠の地下に潜り,地下で複数の河川が合流,大河となって突然地上に姿を現す。これがアルム・シェダ河であり,ビルサとダハーシュを結ぶ大動脈である。
 中心都市はビルサ(ビルサ共和国)。元来,ここにそれほど異種族が集中していたわけでもないが,ビルサの発展と多種族国家としての成功を受け,大陸各地から様々な種族がやってくるようになった。
■東部
 東部は大きく東西に分かれる。西には草原地帯が広がり,遊牧民を祖先に持つ国々が割拠している。東部は温暖湿潤な土地。中心都市はジャタール(ジャタール王国首都)。
 西部や南部,山岳地帯に異種族も暮らしているが,その数はあくまでも少数派。また,特に西部平原地帯では異種族に対する差別が強く,奴隷として扱われるのが普通。
■北部
 パルーシャ山脈とニルパシュ山脈の間には東西交易路北方路が通る。南方路の整備が進む以前はこちらが主流だったが,強風と寒さが厳しく,また途中にめぼしい街がないことなどから,南方路が整備されるに従い衰退。目立った都市はない。
 なお,ニルパシュ山脈の北は氷に閉ざされた不毛の地である。

【大陸中部の主要国】

■ビルサ共和国
 シェダ砂漠の南端にある都市国家。アルム・シェダ河畔に位置し,もとは多種族が雑居して交易をするオアシス集落だった。現在は人口の半数近くを人間が占めるが,残りの半数は様々な種族が占めている。厳しい自然環境に立ち向かうため様々な種族が結束したが,街が飛躍的発展を遂げた今,もはや多種族融和は義務ではなく当然のこととして受け止められている。
 東西交易路の最重要拠点として発展し,莫大な人・物・金を有する。その経済力を背景に強大な影響力を持ち,シェダ都市国家同盟の盟主として君臨している。通貨「ハダル」は周辺地域を超えた共通通貨であり,大陸西部・東部でも一部地域では流通している。
 通商の維持・発展を最優先の課題にかかげ,自国商圏の平和・安全の確保に全力を挙げており,その目的のためにはあらゆる手段をつくす。
 商人による統治が行われており,元首は市長。市長は有力種族が輪番で担当し,選挙により選ばれる。議員は種族ごとに議席が割り当てられている。
■ダハーシュ共和国
 ビルサの南,アルム・シェダ河の河口に位置する港湾都市国家。天然の良港として古くから栄える。現在の市街は,かつてシファーダに圧迫されて移住してきた人々により建設されたもの。そのため大陸東部文化の匂いが残る。
 ビルサとは元来密接な関係を持っていたが,その経済力に飲み込まれる形で「盟約都市」として事実上の属国となった。そのため,この街でも(ビルサほどではないにせよ)人間と異種族との共存が見られる。現在は貴族と商人による共和制だが,かつての王制のなごりで封建的・保守的な部分も残っている。
 近海には暗礁や珊瑚礁も点在するが,人魚による巧みな誘導がその問題を解決している。
■ルメク
 ビルサの北に位置する小都市。温泉があるため,ビルサからの観光客が多い。本来は神殿を中心とするひっそりとした聖地だったが,ビルサが発展するに伴い観光地化した。200年ほど前に新しい水脈が発見されて以来,温泉地としての発展が飛躍的に進んだ。その一方で風紀の退廃が問題視され始めている。政体は神官による合議制だが,すでに形骸化しており,事実上のビルサ支配下にある。
■ヤラート
タリマ山脈の北端近くに位置する国。北方交易路の主要中継点として栄えたが,ビルサの隆盛と南方交易路の発達に伴い国力は大幅に減じた。現在は海上交通に活路を見いだそうとしているが,北方に位置するため冬場は港が凍結し,海運国への脱皮は思うように進んでいない。
■その他の小都市と「シェダ都市国家同盟」
シェダ砂漠には地下水脈にそっていくつかの小都市があるほか,アルム=シェダ河沿いにも,小規模な河港都市が点在する。これらはいずれも隊商・商船の重要な拠点となっている。
 これらの都市はビルサの強力な影響下にあり,ビルサを中心として「シェダ都市国家同盟」と呼ばれる連合体を組織している。この同盟は形式上は各都市国家が同等の立場を保って連合していることになっているが,実質的には「ビルサ通商帝国」とでもいうべきものになりつつある。

【大陸西部の主要国】

■ウィステラ帝国
 大陸西部の盟主。帝政だが,実際に政治を動かしているのは巨大な官僚機構である。都市国家時代のウィステラが周辺都市・地域を支配下に収め,国土を拡大した歴史を持つ。最盛期にはラドリア島や西南部の島々まで植民地にしていた。現在はかつてほどの栄光はないが,しかし発達した都市文明と洗練された文化は大陸西部において燦然と輝いている。同時に,大陸西部で最も強大な軍事力を有する。商業も盛んで,大陸中部との交流も深い。
 なお,人口はすべて人間またはドワーフであり,いわゆる異種族との雑居はない。これは他のウィステラ周辺国もほぼ同様である。
■フォルナス王国
 大陸西端近くに位置する王国。良港サフォルナを首都とし,フォルナ海の海上交易を牛耳っていた。最盛期にはウィステラを凌ぐとも言われるほどの国力を誇り,「西海の女王」という異名をとった。が,新興国アストーンとの商戦に敗れ,徐々に衰退。作中の数十年前に起きた戦争で凋落は決定的となり,フォルナ海交易の主導権はアストーンに移った。シリーズ主人公・ラートの出身地。
■アストーン自由都市
 大陸西端に位置する海運国。元来はフォルナス王国の一部だったが,商人たちの自治が高じて独立した。活発な交易と海賊行為でフォルナスを衰退に追いやり,ついに交易の主導権を奪い取った。
 大陸西部で現在最も成長しつつある国だが,それに伴い中間層の商人が没落し,富は一握りの商人に独占されるようになった。そのため,政情は必ずしも良好ではない。
■ケルハノ大公領
 西部文化圏の北東に位置する国。元来はウィステラ帝国の一部であり,ケルハノ公がその支配を任されていたが徐々に独立志向を強め,現在は事実上の独立国である。
 主要都市はケルハノ市。ウィステラとヤラートを結ぶ北方交易路の中継点にあたり,交易で栄える。しかしビルサの隆盛に伴い北方交易路は衰退,ケルハノの国力も衰えた。現在はレリ湖の産物を河川で運搬し,それを他都市へ供給する交易の方が主である。領内に森林が多いため異種族も密かに住んでいるが,人間との接触はない。
■ガルミ
 大陸中部と西部の境界に位置する街。ウィステラ帝国自治都市。交易路を開拓すべく東進していた商人たちの拠点が起源。従って,西部文化圏の東端である。西部と中部・東部の中継点として,またコステとの中継点としてもにぎわっている。
■コステ
 大陸中部と西部の海の道を繋ぐ中継点として栄える港町。ウィステラ帝国自治都市。ウルナル山脈やクテラ山脈から産する高級木材を,ダハーシュ・ビルサに供給している。

【大陸東部の主要国】

■ジャタール王国
 大陸東部の盟主。諸侯の連合体としての性格が強く,王制ではあるが貴族共和制に近い。肥沃な土地に根ざした農業・牧畜が盛ん。首都ジャタールは八〇万人もの人口を抱える。
 域内の通商,対外通商ともに盛んで,ビルサの良き取引相手。また,マタランを海の玄関とし,西方諸国や東南の港との交易も活発。ティマ,ナミウ,ヤタウはいずれも属国。しかし広大な国土が仇になり,辺境では盗賊や遊牧民による襲撃が絶えないのが悩みである。
 人口のほぼすべてが人間または亜人であり,異種族との雑居は限定的。
■シファーダ王国
 大陸東部の西,タリマ山脈に接する内陸国。王制。王族と封建貴族が政治を独占しており,奴隷制が存在する。なお,大半は人間だが,一定数の異種族も雑居している。しかし一部の亜人以外,ほとんどの異種族は奴隷身分に固定されている。
 東西交易路の中継点であり,ビルサ勢力圏との通商は盛んだが,奴隷制と異種族の扱いの違いから政治的には疎遠。また,伝統的に好戦的・拡張的な性格が強く,ビルサにとってその外交政策は決して愉快なものではない。
 北部・東部に領土問題を抱えており,辺境では小競り合いが絶えない。この紛争はビルサが裏で手を回しているという噂も。
■カサルタル
 タリマ山脈に近い港湾都市国家。形式上ジャタールに服属することで,シファーダを初めとする周辺国に対抗している。ダハーシュとの交易が盛んなためビルサ文化圏と良好な関係を築いているが,東部諸国の例に漏れず異種族に対して抵抗感があるため,自国内の多種族化はほとんどない。
■その他の諸国
 大陸東部は広大な草原地帯を含み,多数の部族国家が散在している。現在は有力国になったシファーダも,元はそうした小国家の一つである。
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