「う、ああ‥‥っ! や、やめ‥‥!」
カーテンを閉め切った薄暗い室内に、呻き声が響く。まだ若い、少年の声。
「やめろ? ふふ、何言ってんだい‥‥さっきからあたしの乳ばかり見てたくせにさ‥‥」
「ち、違っ‥‥くううっ‥‥!」
女の声が低く笑った。同時に、少年がまたしても呻く。ふわふわとした金色に近い茶色の髪を振るわせ、彼はのけぞる。声を出すのが恥ずかしいのだろうか、必死に唇を閉じる。が、女は手加減しない。指先が彼の体を這い回り、慣れた手つきで服を脱がせてゆく。露わになる肌に、爪が柔らかく快楽の刻印を刻んでゆく。指先を淫らに操り、引っ掻き、まさぐって。彼も抵抗していないわけではない。だが、手も脚も動かせないのだ。女の触手は見た目よりも遥かに力強い。その触手に縛られてしまっては大の大人でも逃げづらい。まして華奢な少年など、網に掛かった魚ほどにも動けない。そんな彼に、指先は容赦なく襲いかかる。腰が浮く。顎が天上を向く。我慢できずに声が漏れる。色白の顔は真っ赤に染まり、目尻には涙が浮かぶ。その涙を、女の舌が舐め取った。
「泣くんじゃないよ。ほんとは嫌でもないんだろ‥‥んっ‥‥」
耳元で囁き、そして唇を近づける。少年は一瞬顔を背けようとしたが、女の手がそれを阻んだ。舌が唇をてろりと舐めると、小柄な体がびくんと跳ねた。艶やかな唇が少年の上唇を、続いて下唇をついばむ。白い指先が首筋、そして耳に触れる。舌がねっとりと口内を這い回り、粘膜を愛撫する。少年の口もさほどの抵抗は見せず、ほとんどされるがままだ。ぬらぬらとした舌先が彼の舌にまとわりつく。歯茎を舐めてゆく。にゅるにゅると舌を絡め合わせ、唾液を送り込んでくる。間もなく、少年の口は女の唾液を溜めきれなくなり、口角からとろとろと涎を垂らしてしまう。涎は顎を、首を伝って鎖骨のくぼみに溜まり、さらにこぼれる。薄めの胸板に跡を残し、乳首を過ぎた当たりで横に逸れ、ソファの上にこぼれ落ちた。その間も、ぴちゃ、くちゅ、ちゅるっ、と湿った音が響く。女は唇で少年の口を完全に塞ぎ、舌を吸い、愛撫する。とどめとばかりにちゅううっと音を立てて彼の舌を吸い、そして離した。唾液が糸を引き、切れる。
「‥‥あ‥‥」
少年はうっとりと口を開けたまま、舌を宙に突き出していた。目はとろんと蕩け、自分を押し倒している女をぼんやりと見つめる。それを見て女は声を立てずにかすかに笑うと、もう一度口づけ。絡み合う、二人の舌。
「ああ‥‥はあ‥‥」
「‥‥こういうキスは初めてだったかい‥‥? ふふ、良い反応をしてくれるじゃないか」
ため息のように喘ぐ少年に、女はもう一度唇を寄せる。だが、その顔は互いの唇が触れるか触れないかという距離まで近づき、止まる。熱を帯びた鼻息が、女の肌に触れた。
「ん‥‥」
ぴちゅ、というかすかな音とともに、唇が触れあった。唇を寄せたのは――少年。二人は先ほどと同じように、いや、それ以上にしつこく唇を交わす。舌を交える。互いに貪りあい、すすりあう。
「んん‥‥んふ‥‥」
少年は喘ぎ交じりに女の唇を貪る。だが――
「んんっ! ん、んううっ!!」
唇を奪われたまま、うめき声を上げた。股間に女の指がまとわりついたのだ。指先は下着の上から高ぶりを撫で回す。既に先走りが溢れ、布地の表面にもぬめりがにじみ出ている。女はそちらへ目をやることもなく、手探りだけでそれを刺激する。爪先でカリ首をなぞり、指の腹で亀頭を撫で、手のひらで竿の裏筋を摺る。もうそれだけで少年の股間はびくびくと跳ねる。それに合わせるように、キスをしている口も喘ぎを漏らす。少年は快感に体を反らせようとするが、女はそれを許さない。じゅるるるっとひときわ高い音を立ててキスを終え、そこでようやく愛撫を中断した。
「はぁっ、ああっ、はぁっ‥‥!!」
びくんびくんと身体を震わせ、喘ぐ少年。その様を見下ろし、女はまた笑う。
「くふふっ‥‥女みたいな声で鳴くんだね‥‥。かわいいよ、坊や」
「坊やと‥‥言うな‥‥っ」
涙ぐんだ目が、精一杯の強がりを見せる。それがまた女の心を刺激する。
「そりゃ悪かったね、アノク・ファリ・メフナル準治安官補さん。でもねぇ‥‥女に押し倒されて、ひん剥かれて、キスでとろとろになったあげく軽い愛撫でイキかけてるようじゃ‥‥坊やといわれても仕方ないんじゃないかい」
少年の名前にわざわざ肩書きを添えた上で現実を突きつけるが、実際にはやや不公平な言い方ではある。売春宿「女神のゆりかご亭」の女将であるハールマ――今でこそ経営を主な仕事としてはいるが、彼女自身熟練の娼婦だ。そんな彼女に襲われては、並の男はこの少年と大差ない状況に追い込まれるだろう。だが、そんなことはアノク少年には関係がない。彼にとっては、「貴族出の世間知らずで未熟な役人」という現実を叩きつけられる言葉だった。
――父卿の意向で行政府に入れられてから初めて、単独で仕事を任された。旅館監査――宿屋の看板を掲げる店が、売春などをしていないかどうかを確認するという仕事だった。「型どおりにざっと見てこい」という上司の言葉をそのまま実行していれば、こんなことにはならなかっただろう。ところが功名心に駆られた彼は、よせばいいのに「女神のゆりかご亭」を摘発しようとした。もちろん、護衛を二人連れただけの青二才が敵う相手ではない。あの手この手で彼を煙に巻き、追い返そうとする。それでも彼は食い下がり、粘り、勝ち目のない戦いにしつこくこだわり――業を煮やした女将に押し倒されてこの有様だ。女将の言葉通り、キスでとろとろに蕩かされ、体に力が入らない。ペニスは中断された愛撫を懐かしみ、ひくひくと跳ねている。
(こんな女に襲われて‥‥なんて情けないんだ‥‥!)
悔しさにまた涙がにじむ。護衛の兵を呼ぶという考えもないわけではなかったが――この有様を見られることを秤に掛ければ、それもためらわれた。もっとも、呼んだところで彼らは来もしないのだが。女将や役人と引き離されている間に、それぞれもてなしを受けている最中だ。しかし何よりタチが悪いのは、彼の体の内側からわき起こる欲情だ。初めて味わった女の唇、女の舌、女の指先‥‥。目の前でにやにやと笑う女が腹立たしく、憎らしく――それでいて、彼女への欲望がふつふつと湧き上がる。いつの間にか呼吸は徐々に荒くなり、股間もさらに張り詰めていた。
「ま、諦めて楽しんじまいな‥‥」
屈辱と欲情がない交ぜになったアノクの顔を楽しみながら、ハールマは唇を耳元に寄せる。
「‥‥たっぷり抱いてあげるからさ‥‥ふふふ‥‥」
* * *
「っく、ふっ、‥‥くうっ‥‥!」
少年は顔を真っ赤に染め、歯を食いしばる。それでも漏れる、喘ぎ。女が嫉妬しそうな肌は紅潮して斑になり、荒い息に乗って激しく上下する。その体を、蛸のような触手が這い回る。
「くふふ‥‥声は適当に出しな。あんまり我慢が過ぎると息が詰まって破裂するよ」
冗談めかして忠告するが、無理な話だ。あまりの快感に、アノク少年はもがくばかり。――ハールマは彼の服を脱がせると、いきりたった逸物に触れたのだ。高ぶっていたそれは、女に触れられたことが嬉しくてひときわ派手にそそり立った。そこに触手が絡み付く。根元を縛るように強く握り、腫れ上がった先端を触手の先端がくりくりといじる。鈴口からカリへ、カリから鈴口へ。なぞるような愛撫が責め立てる。とろとろと溢れる先走りがそうやって亀頭全体へ塗り広げられ、吸盤は使わず、その刺激だけで追い上げるつもりだ。もしも彼女が吸盤まで動員して責めにかかっていたら、アノクはとっくに精を噴いているだろう。ゆるめの責めはハールマなりの優しさだ。もっとも、その優しさは全く理解されていないが。
「いい顔だよ。ぞくぞくする」
愛撫は触手に任せたまま、ハールマはアノクの顔を撫でた。その指先を、天井を向いて跳ね上がった顎から、今度は指先をのど元へ、胸元へと這わせる。亀頭の快感と相まって、びくんびくんと体が跳ねる。その口元へ、また唇を寄せる。キス。跳ね上がる体。
「売ったら金になりそうな坊やだねえ‥‥ふふっ」
「‥‥!!」
快楽に悶えながらも、少年の目が恐怖に見開く。それを見て娼館主は笑った。
「冗談だよ、この国でそんなことやっちゃ縛り首だからね。あたしは今で満足してるし‥‥何より、そういうのは大嫌いさ。‥‥でも、あんたはそういうことを言いたくさせる坊やだね――泣かせてやりたくなる」
勝手なことを言いながら、肌をまさぐる。そのたびにビクビクと震える、華奢な身体。
「――そろそろ、イかせたげるよ」
そう言うや、肉棒をいたぶる触手が動きを変える。それまで嬲っていた触手にさらに二、三本が加わり、ペニスの形が見えなくなるように包み込んでしまった。そして全体がうねるように刺激する。潤滑油は少年自身の先走りだ。ぐちゅぐちゅぬるぬるという刺激、そしてそれは徐々に感触だけではなくなってきた。快感に溢れ出した透明の液が触手の隙間から溢れ出し、白い泡交じりとなってにじみ出す。にちゃにちゃという音までが聞こえ始め、それらに呼応して快感が一気に強まってゆく。ヌルヌルの十指にしごかれるような快感に、少年の喘ぎはさらに熱くなっていく。
そんな少年をさらに高めるのが、ハールマの唇、そして指先。指先は乳首や臍を這い回り、唇は首筋を甘噛みする。そして‥‥
「イっちまいな‥‥」
どろりとした囁き。赤い爪が乳首をひねり上げる。触手の先端が鈴口をこじり、残り数本がカリ首に殺到する。ぎりぎりのところで煮えたぎっていた快感が、吹きこぼれた。
「うわあああぁぁっ――んん、んううううううぅーっ!!」
叫びは口づけでむりやりに音を消される。だが下半身の爆発は止まらなかった。精の本流が噴き上がる。天井へ向けてまっすぐに。どばどばと噴き上がり、降り注ぐ。彼を愛撫する触手にびちゃびちゃと降り注ぎ、彼自身の肌へも降りかかる。
――最後の一滴がとろりとこぼれ、そこで射精は終わった。
「ぷはぁっ‥‥はぁ‥‥はぁっ‥‥!」
「派手にぶちまけたね。気持ちよかっただろ‥‥」
紅い唇が耳を甘噛みする。少年は喘ぐほかなかった。
* * *
「ああっ、はぁん‥‥はぁっ、ああ‥‥。うふふ‥‥気持ちいいだろ‥‥」
華奢な少年の上で、肉感的な女が踊る。挿入しているわけではない。肉壺をペニスに擦りつけているだけだ。反り返った肉棒を、淫らな肉びらで包むようにして愛撫する。
「こういうのを「素股」って言うんだ。なかなかいいもんだろ‥‥」
「素股」は人間などの娼婦が、「本番」をしたくないときに使う技でもあるが‥‥人間の素股とスキュラの素股、それはもう別物と言うべきだろう。溢れるぬめりが潤滑油となって、太股――つまり触手の根元が肌と肉棒を刺激する。吸盤がこりこりとした刺激となって、肌と肉棒を責め立てるのだ。この吸盤を用いた技はスキュラ特有のもの。本来ならここで吸盤自体の吸引力を使ってさらに複雑な愛撫もできるのだが、今はしていない。それでも、少年には強すぎるほどの刺激だ。ハールマが技名を教えてくれても、喘ぐばかり。
「うああっ、はぁっ、っく、はあっ‥‥!」
汗を滲ませて喘ぐ。だが、もう抵抗はしていなかった。悔しさも忘れ、欲情した目で娼婦を見つめる。そんな彼を、ハールマは挑発する。いやらしい唇から、ちらりと覗く舌。髪を掻き上げたかと思うと、今度は自分の乳房を揉んでみせた。白く張りのある、豊かな双肉――その柔肉に、赤い爪が食い込む。指の隙間から乳首がはみ出し、そして指に潰されて踊る。その淫猥な手つきに誘惑され、少年の手が伸びていく。
「ふふ、揉みたいかい‥‥素直でいいよ‥‥。ほぉら‥‥ああっ‥‥!」
誘うと、手は反射的にハールマの乳房に届いた。痛いぐらいに指先が食い込む。その揉み方はなんともぎこちない。ぎこちなく、拙く、必死な愛撫。彼女をよく抱く客とはまるで違う。アノクの必死さは技巧的な快楽を生みはしないが、その必死さがハールマをくすぐる。彼女は身体を倒して少年に覆い被さるようにすると、
「あんまり揉みたくるんじゃないよ、ここは敏感なんだ。もっと優しく、甘く――‥‥はぁっ、そう‥‥ふふっ、上手いじゃないか」
「こ、こう‥‥?」
「あはぅ‥‥そう、丸く、柔らかく‥‥」
飲み込みが良いのか、才能があるのか‥‥彼女が手を取って指南すると、少年はそれを確実に吸収する。そうしてしばし乳揉み訓練をしていたが、訓練に音を上げたのはハールマだった。
「はぁっ‥‥はぁああん‥‥っ! あははっ、こりゃ驚いたよ。まさかこんな坊やに、っく、乳で追い詰められちまうとはね‥‥。はぁ、はぁっ‥‥乳首、摘まんでみな。力入れるんじゃないよ、そう‥‥そうやって、揉みながら‥‥っく、は、あっ、あはぁっ‥‥!!」
確実に高ぶってゆく女。肌にじっとりと浮かぶ汗は、運動によるものではない。まして、少年の身体を這い回る触手がひくひくと震えるのは。
アノクは自分の乳首を責めていた触手が、上へ伸びてくるのを感じた。首筋を這い上がり、口元へ迫る。そして、ぴくっぴくっと震えながら唇に触れる。唇を軽く開けると、その中へ。
「はぁ、はぁ、舐めてごらん‥‥」
視線で頷き、触手の先端を迎える。舌に絡むように、その先端はじゃれついてきた。
「‥‥軽く、噛んでみな」
(‥‥いいの?)
目が、不安さを湛えてハールマを見返す。反応は――頷き。熱に浮かされたような瞳が、彼を見つめる。乳房を揉む手に、ハールマの手が添えられた。
「あはぁっ、はぁっ、ほら、ぼーっとしてんじゃないよ‥‥っく、はっ、ぁ、女のほうから感じるところを教えてやってんだ、はぁっ、早くしな‥‥!」
急かさせて、彼は思いきった。乳首をくっと摘まんだ。触手の先端に歯を立てると、こりっとした固さが伝わってくる。それを、甘く、噛んだ。
「‥‥いくっ‥‥!」
びくんっ‥‥!
ハールマの身体が跳ねた。それは軽い絶頂だった。しかしそれは、とても新鮮な絶頂だった。
その後、ハールマはたっぷりと少年を搾った。触手で一度、手で一度、口で一度。しかし挿入はなし。そのころになると、少年は少年らしい欲情を露骨に出すようになっていたため、何度か彼女の蜜壺を狙ってはいたが、彼女はそれを許可しなかった。
「坊やは童貞なんだろ? スキュラで卒業するのはやめた方がいいだろうと思ってね」
「‥‥?」
不審そうな顔をするアノクに、思わず笑い出す。
「若い内からあたしにハマっちまうと‥‥人生狂うよ? ま、出世したらまた来な。祝いがてらにたっぷりヤらせたげるからさ――有料だけどね」
* * * * *
監査官一行がやって来たのは昼過ぎのこと。普通なら半時間そこそこで引き上げるだろうに、その何倍もの時間が過ぎていた。あたりは金色の光よりも薄暗がりが増え、それとともに酔いどれも増えてきている。そんな中、「女神のゆりかご亭」玄関には女数人と役人たちがいた。
「‥‥では、今回の監査はこれで終了とする」
どうにか職業上の口調を取り戻し、アノク・ファリ・メフナル準治安官補はそう言った。来たときのような挑みかかる視線はなくなり――というよりも、女将を正視できないようである。
「ずいぶんかかったけど、要するにお咎めなし‥‥ってことですよね、女将さん?」
ハーピーの娼婦がわざとらしく聞く。もちろんすべて知っての上だ。
「そうらしいね、ありがたいことじゃないか」
腕組みをすると、胸元からむっちりと柔肉が溢れる。準治安官補がごくりと喉を鳴らした。
「い、行くぞ」「「はっ」」
あからさまに照れを隠し、彼はきびすを返す。返事をした衛兵は、その背後で笑いを堪えながら顔を見合わせた。
* * * * *
そしてその夜。
「聞いたぞ、監査の坊ちゃんを食ったらしいな」
ベッドに腰掛けハールマを待っていた男は、開口一番妙に嬉しそうな顔でそう言った。
「‥‥ったく、あのおしゃべり娘ども‥‥」
事情が筒抜けらしいことに、ハールマは苦笑しつつ男の隣に腰掛けた。男は彼女の腰を抱き寄せ、首筋にキス。
「でも久々じゃないか? 監査逃れにお前が体を使うなんて。例の書類を使えば一発だろうに」
「例の書類ねえ‥‥見せたよ。見せたんだけど、どうもハナから摘発する気だったらしくてね、全然納得しないんだよ。あんまりしつこいからさ‥‥」
男に絡みつきながら口づけを交わす。例の書類というのは‥‥この客の男、すなわち“ガルフ”ことダハーシュ行政府一等書記官ガルファム・カーリミが横流しした、旅館営業許可証である。そして監査の日程を女将に教えたのもこの男。彼はハールマの上客であり、友人なのだ。市政府の風紀取り締まりに関しては、この男がそれこそザルのように情報を漏らしてくれる。もちろん、ハールマも彼女なりのやり方でその対価は支払っている。
「理由はそれだけか?」
「ふふ、まあ‥‥ちょっと味見したくなった、って気が無かったと言えば嘘になるね」
「ったく‥‥いたいけなお坊ちゃんにこの体を教えたのか‥‥悪い女だ」
後ろからすくい上げるように乳房を揉む。ただでさえ谷間の目立つ胸元から溢れ出んばかりに乳肉が盛り上がり、そして指の動きに従って艶やかな突起がちらつく。その先端は早くも尖り始めているようだ。
「そういう悪い女には、おしおきが必要だな」
「あはぁ‥‥ん‥‥。お手柔らかに頼むよ‥‥ああっ‥‥」
喘ぐ女の首筋にかぶりつき、そして胸元を一気にはだけさせる。ぷるん、と音を立てんばかりに乳房がこぼれ出し、うれしそうに弾む。ガルフはその柔肉に遠慮なく指をめり込ませ、揉み込んだ。荒いが、計算され尽くした揉み方だ。紅を引いた唇がいやらしく開き、熱い吐息を漏らす。
「ガキじゃ満足できなかっただろ‥‥俺がいっぱいイかせてやるよ」
きざったらしいセリフに、ハールマは思わず笑った。いや、セリフに笑うと言うよりは‥‥
「ふふふっ、それがさ‥‥聞いとくれよ、監査の坊やにイかされちまったんだ。乳の揉み方を教えたら、なんだか飲み込みが早くてさ‥‥ふふ、ああいうのも新鮮で、悪くないね」
おかしそうな口ぶりだが、まんざらでもなさそうな風情だ。ガルフはそれが気に入らない。
「ふん。ハールマともあろう女が、ヒヨッコに抱かれて色気出してんのか?」
「ばか言ってんじゃないよ。‥‥あんた、妬いてんのかい?」
「だっ、誰が! お前は娼婦だろう、娼婦が男と寝るからって妬く奴がいるかよ」
声を荒げてそっぽを向く。実に分かりやすい男である。そんな彼に、とびきり甘い囁きがまとわりついた。
「ま、あの子も予想外に良かったんだけどさ‥‥やっぱり素股じゃ、ここが満足しなくてね」
ガルフの手を取って、下腹部に押しつける。同時に、顔を振り向かせて唇を重ねた。
「――半端に燃えたせいで、子宮が疼くんだ‥‥。あんたのゴツいので、あたしのここを黙らせとくれ‥‥」
むくれ気味だった顔が一気に野獣になる。彼はハールマを抱き上げると、そのままベッドへなだれ込んだ。はだけていた服をはぎ取り、情熱的に唇を交わす。秘肉を掻き乱し、双丘をこね回し、女の唇から淫らな喘ぎを引きずり出して。
ハールマは灼けつく快楽を刻み込まれながら、少年のことを思い出す。
(あの子‥‥いいスジしてるよ‥‥っく、はぁ‥‥でも、こいつには敵わない、かな)
「余計なことを考えてる顔だな」
「いい勘してるじゃないか‥‥っ、あああっ、ちょっ、待ちなよ、あああぅうっ!!」
――二人は熱く絡み合い、交わり続けた。
(終)
リハビリがてら‥‥と思って書き始めたネタがどうにも長くなりすぎるので、再三書き直すハメに。書き直しすぎて本来書きたかったシーンまで消えてしまった‥‥。
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